汚職と脅迫に基づくプーチンの超長期政権 権力の私物化が招いたウクライナ侵攻
プーチンの私的なものとなったロシアの権力
これは、金銭的な報酬を与えることで忠誠をつなぎとめることよりも、はるかに効率的なシステムなのかもしれない。さらに、プーチン氏のシステム内で活動した人間は、その世界から足を洗うことは許されない。脅迫のシステムは動き続ける。その結果、政権を去った者であっても、プーチン氏に脅威をもたらすような行為は許されない。 このようなシステムは、プーチン政権を支えるひとつの要素に過ぎないが、一方でそれは、プーチン氏の統治手法を象徴しているといえる。 ロシアにおいて、そのような統治構造が20年以上に及び続いたのだとすれば、プーチン氏の周辺に、その意向に反する発言や行動ができる側近が居残り続けられるとは考えにくい。政治システムはますますプーチン氏の私的なものとなり、同氏の判断が国内の勢力によって押しとどめられたり、変更されたりする可能性は、極めて低くなる。 ウクライナ侵攻という、国際社会を大混乱に陥れたプーチン氏の決断がロシアをどのような状況に導くかは、依然見通すことはできない。しかし、プーチン氏の暴走ともいえるその行動は、プーチン氏を食い止めるシステムがほとんど稼働しなくなった政治環境のもとで生まれたことは疑いようがない。 連載第4回『【狂気の決断】ウクライナ侵攻最大の要因 プーチンが考える「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」とは』(9月17日公開)に続く
黒川信雄