「信じられないほどひどい」ボルシアMGで主力の板倉滉がこぼした本音「苦しいね。1勝するのが難しいなって」【現地発コラム】
「得点パターンも攻撃パターンも少ないというか…」
ピッチに立っていて、仲間が自信を持ってプレーできていないことも感じているようだ。 「前に(パスを)つけれるところで、後ろになる。そういう機会を逃すと、どんどん相手が前向きにプレスを仕掛けてくるし、どんどん押し込まれて、結局キーパーまで下げるといったシーンが多い」 ボールを持ってもどのように運べばいいのか。そのあたりに迷いを感じる。チームとしての狙いがないわけではない。ただ、そのパターンが相手にすっかり研究されてもいる。それは板倉も認めるところだ。 「得点パターンというのが少ないし、攻撃パターンも少ないというか。1トップのジョーダン(シエバチュ)にパスを入れる以外の形がなかなかないと思う。それが自分たちの強みではありますけど、厳しいなと思う」 ここ数年、ボルシアMGはチーム改革に乗り出している。いや、乗り出そうとしているといった方が適切かもしれない。 2019-20シーズン、マルコ・ローゼ監督(現RBライプツィヒ)とともに4位でフィニッシュしたクラブは、チャンピオンズリーグ出場権を獲得した。しかし、翌シーズンの途中にローゼ監督が21年夏のドルトムント行きを表明すると、一気に成績が悪化して8位低迷。以降、ボルシアMGはトンネルから抜け出せずにいる。 ローゼの後任となったアディ・ヒュッター、ダニエル・ファルケはそれぞれ1シーズンでクラブを去り、今シーズンから指揮を執るセオアネも明確な骨格を作ることができないでいる。
どんな状況でどのように動くのかが曖昧
ボルシアDNAというクラブのアイデンティティを否定するわけではない。自分たちでボールを持ち、繋いで崩す。そういうサッカーを志すのはいい。ただ、チーム事情と理想が離れすぎていると、どうしようにも納得のいくパフォーマンスを引き出すことはできない。 板倉も「戦い方を変えるまでは言うつもりはない」と前置きをしたうえで、こう思いを打ち明けてくれた。 「フライブルクもそんな難しいことをしているわけではない。ロングボールから起点を作って、どんどん押し込んできた。チームとして臨機応変にプレーできたらという思いはある」 不安定な戦いが続くチームにおいて、主力の板倉にかかる期待は大きい。ただ、ひとりで状況を好転させることは簡単ではない。フライブルク戦では守備時に各選手の距離感や位置取りが不明瞭で、だれがいつ、どんな状況でどのように動くのかが曖昧だった。 チームの戦術的規律をより明確にし、個々の選手が実力を発揮できる土台を作らないかぎり、低迷の打破は難しい。 「スポーツというのは都度、立ち上がり、自分たちを見つめ直して、ハードに取り組んで、次に向けて頑張ることが大事だ」 セオアネ監督はフライブルク戦後の記者会見でそう語っていた。それがピッチ上のパフォーマンスに反映される日をファンは心待ちにしている。 取材・文●中野吉之伴