「好き」を言語化するより、ネガティブな感情を言葉にするほうが難しい!… 三宅香帆が提唱する3つのポイントとは
退屈の理由を探る
さて、ネガティブな感情が「退屈」だった場合。 つまり、どこの場面が嫌だとか、どのキャラクターが好きじゃないとか、あの衣装が嫌だとか、そういう際立った不快さが存在するわけじゃない場合。ただただ、意外性がなく、面白さを見出せずに退屈だった場合。 あなたは退屈の原因として「どこがありきたりだったのか」を考える必要があります。 そう、ここでも重要なのは具体的であること。決して全体的に退屈だったという結論で終わらせるのではなく、どの要素がありきたりに思えたのかを考えましょう。 物語であれば、キャラクターが凡庸なのか、ラストがいかにも予想の範疇だったのか、セリフが普通すぎたのか。あるいは、人であれば、どの要素が自分にとってありきたりだと思えるのか。 全体的になんとなく退屈、なんて誰にでも言えます。そうではなくて、一体どこが退屈なのか、その要素を洗いだしてみるんです。それによってあなたの感想はあなたにしか書けないものになります。 ポジティブな感情もネガティブな感情も、とにかく具体的に細分化すること。それがい い言語化の鍵になります。
一般論で語らない!
ネガティブな感想を書くうえでもっとも注意すべきなのは、決して一般論で考えないことです。あくまで「自分が」嫌な感情を覚える点について考えることに注力しましょう。 「みんなも」ここは嫌でしょう? などと考え始めると、感想はドツボに陥るんですよね。 一般論じゃなくて、まずは自分の嫌だった点を深堀りする。 もし、不特定多数のみんなに向けた感想を書きたくても、その前に自分の感想を深堀りして言語化したうえで、みんなに向けた加工をおこなうべきです。決してみんなの言葉を代弁しようとせず、まずは自分の言葉をつくることに専念する。それが、いい感想への近道です。 ポジティブな感想もネガティブな感想も同じように自分の感情を言語化することが重要ですが、とくにネガティブな感想は、みんななぜか一般論で考えようとしちゃうことが多い。たぶん、これを批判しているのは自分だけじゃないはず! と考えたくなるからでしょう。群れから外れたくないという人間の本能なのかもしれません。 でも、ひとまず自分の感情を言語化したほうがいい。私はそう唱えることをやめません。 なぜなら、自分の感情を言語化できていないと、みんなの感想との境目がわからなくなるからです。 みんなの感想と、自分の感想を混ぜないためにも、最初に自分の感想をメモしましょう。 というわけで、ネガティブな感想の言語化プロセスは次の通りです。 ◎ネガティブな感情の言語化プロセス (1)「不快」(際立って嫌な感情を抱いている)。もしくは、「退屈」(ありきたりでつまらないと感じる)のどちらなのかを考える (2)「不快」の場合 (1) 自分の(嫌な)体験との共通点を探す (2) (自分が既に)嫌いなものとの共通点を探す。「退屈」の場合どこがありきたりなのか考える 文/三宅香帆 写真/Shutterstock.