「好き」を言語化するより、ネガティブな感情を言葉にするほうが難しい!… 三宅香帆が提唱する3つのポイントとは
ネガティブな感想=「不快 or 退屈」
まず、あなたが感じたネガティブな感情が、はっきりとした「不快」なのか、あるいは「退屈」だったのかを考えます。 「不快」とは、心がザワザワする、嫌な気持ちになる、気分が悪い、すごく胸が痛くなる……など際立った感情です。マイナスに振り切れた違和感のことですね。 一方で「退屈」とは、面白くなかった、よくある感じだった、なんだか刺激されなかったなど、際立ったものがないことへの失望です。 ポジティブな感想は「共感」か「驚き」に分類できますが、ネガティブな感想は「不快」か「退屈」に分類できます。なにか嫌なものがあったのか、なにもなくて退屈だったか。 まずは、その感情がどちらだったのかを考えてみてください。
不快の理由を探る
あなたの感想が「不快」=なにか際立って嫌なものがあったとき。その感情を抱いた原因を考えてみましょう。やるべきは、次の2点に心当たりがないか考えることです。 (1) 自分の(嫌な)体験との共通点を探す (2) (自分が既に)嫌いなものとの共通点を探す 好みにも元ネタがあるように、嫌いなものにも元ネタがある。だって、なにもないところに「不快!」なんて感情は、突然湧き立ちませんから。「なんかこれ、すごい心がざわつく、嫌だ~!」ってわざわざ思うとき、そこにはなにかしらの原体験があるはずです。 不快の理由がフィクションのキャラクターだったり、人のエピソードだったりしたら、現実の体験かもしれない。あるいは衣装の色だったり物語の結末だったりする場合は、既に知っているもので同じく嫌いなものがあるかもしれない。「うーん、自分ってこういうパターンが嫌いなのか」とぜひ嫌いなものの共通項を言語化してみてください。 ちなみに私の場合は、「世界と君のどちらを救うか決めろ‼」みたいな物語パターンがすごく苦手なんですよ。そういう選択肢がでてきた時点で「うげっ」てなってしまう。これにネガティブな感情を抱いてしまうのは、「主人公がわりといろんなことに無自覚であることが許されている」状況が苦手だからなんですね。 だって世界か君かのどちらかを選べだなんて、「世界」に含まれるいろいろな影響をしっかり理解しようとしていないように見える。そういう無自覚性みたいなものが許されている世界が……ああ苦手……と感じてしまうんです。 で、無自覚さが苦手、という共通項を考えると「あーあのキャラも私は無自覚さが苦手なんだ」と思い至ることがあり、そこからずるずると自分の現実での体験も思い出す……みたいなことをやります。 はい、面倒な作業でしょう。「嫌い」を言語化すること。 「好き」よりも「嫌い」を言語化するほうが、よっぽど困難な道のりなんですよ。