なぜ入浴が体に良いのか、効果を科学的に解説。全身浴、半身浴、反復浴…すべて正解で、湯上りに気持ちのよい「自分に合った入浴法」を選ぶ
◆タモリ式入浴法は40代後半以降に適している 特に分かりやすいのが「タモリ式入浴法」だと思います。 タレントのタモリさんが石鹸を使わずに長湯によってすべすべの肌を維持しているという話をされた後、それを実践する方が増えました。 おそらくご本人にとって心地よい入浴法なのでしょう。ただし、万人に合うわけではなさそうです。 特に皮脂の分泌が活発な40代以前や、発汗の激しい仕事の方には合わない入浴法です。 皮脂の分泌は年齢によって大きく変わります。生まれてすぐは肌が無防備なので母親が準備したホルモンの働きによって皮脂の分泌が多いですが、皮膚の常在菌が整うようになると皮脂の分泌は減少し、思春期まで少ない状態が続きます。 思春期を迎えてホルモンの産生が活発になると再び皮脂の分泌が活発になります。 皮脂は湿潤性、摩擦性、伸展性という肌の重要な性質を補強しますが、大人としての本格的な身体活動を始める準備なのでしょう。 こうした皮脂の分泌が活発な青年期にタモリ式入浴法を実践してもとてもうまくはいきません。皮脂の分泌が減少しはじめる40代後半以降でないと、実践するのは難しいかもしれません。 同じように年代や季節や生活習慣によって適した入浴法は変わります。どれかに固定せず、湯上りに気持ちのよい入浴法を選ぶことが重要です。 選ぶためには、入浴によって体に一体どのようなことが起きるのか、メカニズムを知っておくことは有意義だと思います。
◆入浴によって起きること 入浴で体に起きるイベントは大きく3つであり、「温熱」「洗浄」「浸透」です。 「温熱」はお湯から直接受ける対流熱と、遠赤外線による放射熱(輻射熱)の2つがあります。 「洗浄」は主に温熱発汗、アルカリ性、界面活性剤の3つの効果によるもので、常在菌も大きく関わります。 「浸透」ではお湯に含まれるミネラルが水分とともに体内に浸透したり、排出されたりします。 入浴の基本的な目的は、一つ目の温熱効果によってほとんど達せられます。 洗浄の一部も温熱効果によるものです。 しかし現代社会では高度な清潔さを求められるため、わずかに残った古い角質(垢)や皮脂や雑菌がにおいの原因になったり、不快感の原因になったりします。 そのため石鹸やボディソープといった界面活性剤が登場することになりますが、これらはあくまでも「補助」です。 毎日使用することになんら差し支えありませんが、界面活性剤はあくまでも洗浄の「補助剤」であるという認識が肌を健康に保つうえでとても重要になります。