日大「言った」「言わない」の醜い水掛け論会見で浮き彫りになった問題点
日大アメリカンフットボール部の内田正人前監督(62)とディフェンスラインコーチである井上奨コーチ(30)が23日、都内の日大本部で午後8時より約2時間の記者会見を行い、前日に会見を行った同大学の宮川泰介選手(20)の発言をほとんど否定した。6日に行われた日大―関学大の定期戦で、宮川選手が関学大のQB選手に悪質なタックルを仕掛け全治3週間の怪我を負わせた問題は、その後、SNSで拡散、関東学生連盟の処分や、関学大の理路整然とした抗議を経て、大きな社会問題に発展した。“加害者”の当該選手が、先に会見を開き、もう逃げ切れないと考えたのか、日大と日大アメフット部の責任者は、あわてて事件勃発から17日後にようやく記者会見を開いたが、その内容は「言った」「言わない」の水掛け論に終始。悪徳政治家ばりに「言ってない」「覚えていない」の自己保身にまみれた醜いものだった。
前日の宮川選手の記者会見での発言と、この日の内田前監督、井上コーチの主張の主な食い違いを整理してみると、以下の7点になる。 (1)宮川選手 「QBを1プレー目で潰せば出してやると言われた」 【内田前監督】「信じていただけないと思うが、私の指示ではない。ルールを守る原則の中でやっている」 【井上コーチ】「潰せとは言ったが、怪我をさせる目的では言っていない。監督から僕にQBを怪我させてこいというような指示もなかった」 (2)宮川選手 「相手QBとは知り合いか?関学との定期戦がなくなってもいい。相手QBが怪我をして秋の試合に出られなくなったらこっちの得だろうと井上コーチから言われた」 【井上コーチ】「QBと知り合いかとは聞いたが、定期戦がなくなってもいいというのは言っていない。一言一句は覚えていないが、相手QBが潰れたら損とか得とかも言っていない。怪我という言葉を使ったかどうかは覚えていません」 (3)宮川選手 「試合前に相手のQBを潰しにいくので使って下さいと監督に伝えた」 【内田前監督】「何を言っているか正直わからなかった。そんな会話はなかった」 (4)宮川選手 「(潰しにいくから使って下さいと伝えた際)監督からやらなきゃ意味ないよと言われた」 【内田前監督】「その言葉は申し訳ないが、言っていないと思う」 (5)宮川選手 「できませんでしたでは済まないぞ、わかっているなと、試合前の整列時に井上コーチに言われた」 【井上コーチ】「試合が終わって何もできませんでしたじゃ、あかんぞ、やってこいと言ったが、それは彼に思い切りやって欲しい、いつもと違うようなプレーをして欲しいという意味で言った」 (6)宮川選手 「監督から日本代表にいっちゃダメだよ、と辞退するように言われた」 【内田前監督】「参加しないことにはなっていない。怪我をしたら秋の大会に響くので考える余地はあったが代表から外していないはず」 (7)宮川選手 「個人的にでも相手選手、家族に直接謝罪にいきたいと、監督にお願いしたところ、やめて欲しいと止められた」 【内田前監督】「部と部の文書の行き来でやっていくのかと思った。(自身の謝罪が遅れた理由は)相手から電話が来ると思って待っていた」 いずれも「言った」「言わない」の水掛け論だ。今後、学内で立ち上げるという第三者委員会(どういう人選にするか、本当に価値ある第三者委員会になるかどうかに疑いはあるが)は、これらの会話を側で耳にする立場にあった関係者全員から綿密な聞き取りを行わねば白黒はつかないだろう。