日大「言った」「言わない」の醜い水掛け論会見で浮き彫りになった問題点
井上コーチが、宮川選手をすぐさま交代させなかったのは、「思い切りやる」という範疇の中に、怪我をさせるような悪質タックルが含まれていたからである。もし、あのタックルが彼が説明するような「想定していないもの」であったら、後から反省する前に、そこで交代を指示していただろう。 またアメリカンフットボールの監督は、試合中にスポットにいるスカウティングメンバーからの報告と同時に、各ポジションのコーチと綿密にコミュニケーションを取る。2度目、3度目のラフプレーを認めていたのならば、ハーフタイムなり、試合中のどこかのタイミングで事情を確認してすぐさま対処はできていただろう。 それを「私は見ていないので知らなかった」というのならば、そもそも、この人には監督の資格がなかったのだ。また井上コーチも試合後のミーティングで内田前監督に、宮川選手のプレーについて報告を行い、今後の指導方針を確認しておくべきだった。 反則まで指示していないのに宮川選手が勝手に暴走した ── 。 2人の会見の主旨は、そういうことだったが、そこまで追い詰めた体質、指導者の責任については言及しなかった。彼らが会見で語った宮川選手の発言否定と、責任の転嫁は、自分たちが指導者失格でした ── と言っているのと同じなのである。「甲子園ボウル優勝で免疫のない選手が判断を間違えた」「ついてこられなかった選手がいる」(内田前監督)のではなく彼らの指導能力が欠けていたため今回の悲劇は起きたのである。 内田前監督は常務理事の無期限謹慎と井上コーチは辞任を表明したが、彼らを監督、コーチにした大学にも任命責任がある。なぜなら日大は監督、コーチに大学が給料を支払っているからだ。指導者失格のひとたちに150人以上の生徒を任せてしまっていた大学側の監督責任も非常に重い。 そういう責任をまったく感じることなく、記者会見で記者に対して「しつこい」「もう質問はやめてください」「もう喋らないで下さい」などと、高圧的に命令していた広報の人間も、また問題である。 広報イコールそれは大学の姿勢なのだ。 もう、この大学に自浄作用も再発防止の手立ても期待できないだろう。 今後、関東学生連盟が、どれだけ日大アメフット部に重い処罰を下すのか。或いは司法が、どう真実を明らかにするか。そこに頼るしかアメフット界全体が被った失墜を回復する手段はないのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)