クラッチ操作不要でスポーティ&イージーに楽しめる E-Clutch、ホンダ「CB650R/CBR650R」に見た新時代
■クラッチ操作不要、世界初の機構 ハイライトは世界初の二輪車用Honda E-Clutchだ。Honda E-Clutchはクラッチレバーを握ることなく、ライダーによるシフトペダルの変速操作だけで、発進、変速、停止ができる進化型MTだ。しかもHonda E-Clutchはライダーによるクラッチレバー操作をいつでも受け付けるため、一般的なMTとしても操作できる。 ただし、クラッチ操作はシステムが行うものの、クラッチレバーを装備するため法規上はMTモデルとしてみなされる。よって、CB650R/CBR650Rの場合、AT限定大型二輪免許では乗ることができず、大型二輪免許が必要になる。
「新しい駆動機構を開発してパラダイムシフトを起こしたい、そんな想いから私はホンダを目指しました。入社時は世界初の二輪車用DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の開発が最終段階を迎えたころでした。DCTは二輪車向けATシステムとしての完成形ですが、私にはMTを進化させたいという想いがありました。バイクの醍醐味は両手両足、全身を使って走らせることではないか、との考えからHonda E-Clutchの着想にいたりました」(本田技研工業でHonda E-Clutch開発責任者を務める小野惇也さん)
「今から10年ほど前、Honda E-Clutchの前身システムである、クラッチ自動制御システムの開発責任者になりました。技術検証の最初期モデルから機能や性能は良好でしたが、技術開発と製品開発は性質が異なるため製品化となるとコストや製造面で大きな課題をいくつも抱えました。もう一生、量産化にたどり着けないのではないかと考えたほどです」と、小野さんは開発初期の苦労を語る。 「Honda E-Clutchは進化型MTとしての位置付けですが、開発初期のころにはクラッチレバーがついてなかったり、逆にパーキングブレーキがついていました。しかし、量産に向けてシステム全体の思い切った見直しが必要だと判断し、シンプル路線に切り替えました。本来やりたかった“MTの進化”にこだわったのです。MTでできることはすべて織り込み、さらにHonda E-Clutchとして独自に進化させました。モーターで直接、クラッチを制御するのは社内でも無理だと言われていましたが、弊社『ASIMO』のロボティクス技術に関する知見を採り入れることで、大幅に速い制御周期で外乱やばらつきを抑えられる理想的なシステムが完成しました」(小野さん)