通算2636勝のトップ騎手が転身!福永祐一が「調教師のほうが性に合っている」と語るワケ
「子供の頃は競馬に興味がなかった」
「40歳を超えてどのようにすればレースに勝てるのかは分かったけれど、新しい発見がなくなってしまった。だから次のステップに進むことにしたんです」 【写真】密着、元トップ騎手・福永祐一調教師の一日 通算2636勝、日本ダービーで3勝──トップジョッキー・福永祐一(47歳)が昨年2月の引退後、自ら選んだのは「調教師」の道だった。今年3月の厩舎開業以来、夜明け前に起床し、滋賀県栗東市のトレーニングセンターに通っている。 福永の一日は、馬の脚を触ることから始まる。 「足を触って腫れや傷、熱感がないかをチェックし、体に触れて調教メニューを決めます。余裕があると判断したら少し負荷が強めの調整に組み直します」 餌の量を書きこんだ間食表を見て、各馬の餌を調整するのも重要な仕事。朝早くから、11名のスタッフが5時半の調教開始に備え、黙々と仕事に取り組んでいた。その後、広大な敷地の中をコースまで騎乗して移動。コース上を颯爽と馬を走らせる福永の姿に思わず現役の頃を重ねてしまった。 「こちらのほうが自分の性に合っています。騎手はフィジカルや感性が重要だけど、調教師は思考と技術と判断力次第で、世界のトップクラスにもなれるので。自分の強みは多くの騎乗経験があること。今は他の厩舎から引き継いだ馬に頼っているところも多いですが、早く自分の方針で育成した馬を走らせたいです」 “子は親を選べない”と言うが福永の場合、天才ジョッキーと言われた父・洋一の存在はとても大きい。初の著書『俯瞰する力 自分と向き合い進化し続けた27年間の記録』でも綴られていた、幼少期のことを振り返ってもらった。 「子供の頃は競馬には全く興味がなかったですね。サッカーがしたいという理由で乗馬クラブも1年でやめてしまいましたし。そんな自分がいきなり『騎手になる』と言い出したんですから親は驚いたと思います」 騎手になろうと思ったのは、自分の将来について初めて具体的に考えた中学2年の進路相談の時だった。