欧州に「本腰」入れる中国メーカー 長城汽車(GWM)が本格上陸 「嗜好」の違い課題に
中国企業の勢い 英国記者の "肌感"
中国の自動車市場は世界最大だ。昨年だけで3000万台以上が登録され、その数は欧州市場の3倍にもなる。もちろん、今更驚くべきことではない。国外の企業が長い間、中国に集まって製品を売ってきたのはそのためだ。 【写真】見た目は「ファンキー」な中国製EV【GWMオラ03(旧オラ・ファンキーキャット)を写真で見る】 (23枚) しかし、中国には61の国内メーカーがある。すべて独立系というわけではなく、主に吉利汽車(ボルボ、ポールスター、ロータスなどの親会社)やBYD(比亜迪:PHEVの世界最大のメーカー)といった巨大グループ、国営の長安汽車や上海汽車(MGなどの親会社)など、18の有力企業によって運営されている。 自国市場での好調な販売により、中国企業はここ数年で世界進出を試み、大きな成功を収めている。自動車輸出は2020年からわずか3年間で5倍の490万台に達した。これは、中国が日本を抜いて世界最大の自動車輸出国になったことを意味する。 中国を業界トップに押し上げているのは、単に生産量だけではない。最近では品質も向上している。例えば、昨年英国でテスラ・モデルYに続いて2番目に売れたEVは、2万5000ポンド(約500万円)のMG4だった。BYDと吉利汽車傘下のジーカー(Zeekr)も波に乗っており、シャオペン(小鵬汽車)、ニオ(NIO)、そしてチェリー(奇瑞汽車)傘下のOmodaも間もなく英国に参入する。 もう1つ注目すべきはGWM(長城汽車)だ。GWMは昨年の世界販売台数が120万台と、中国では5番目に大きな企業で、その傘下には5つのブランドを抱えている。パワー(Poer)、ハヴァル(Haval)、ウェイ(Wey)、タンク(Tank)、オラ(Ora)だ。
すでに地位を築きつつあるGWM
GWMが欧州に進出するのは、厳密には初めてのことではないが、これまでの事業では信頼を得られていない。かつて欧州で唯一の中国ブランドであったが、そのことを覚えている人は少ない。 再挑戦の先端を切るのが、飽和状態にあるEVセグメントでニッチを切り開こうとするEV専用ブランド「オラ」である。2022年、装備は充実しているが欠点もあったCセグメント・ハッチバックのファンキーキャット(現在のGWMオラ03)を投入した。今年後半には、ヒョンデ・アイオニック6のようなセダン、オラ07が発表され、新型のSUVも続くと言われている。 しかし、たった1ブランド2車種しかないGWMの名前を、なぜ欧州の消費者が気にする必要があるのか? それは近い将来、それほどニッチではなくなるかもしれないからだ。 GWMはすでにオーストラリアと南米の一部に進出しており、今後は欧州に重点を移すと明言している。同社の欧州ブランド兼マーケティング責任者のティエモ・ヤーンケ氏は、「欧州市場、特に英国への進出において、除外するブランドはありません」と話す。 GWMはすでにドイツで確固たる地位を築きつつある。 バイエルン州では、マツダCX-5と同クラスの欧州限定ハイブリッドSUV、ウェイ05(旧コーヒー01)を販売しており、より小型の03も投じる。どちらも英国に導入される予定だ。SUVブランドの「ハヴァル」とピックアップトラックブランドの「パワー」も東欧ではよく知られている。 ロシアのトゥーラ工場(中国初の自動車工場として2018年に開設)では、ロシアやブルガリアなどに向けて15万台の自動車を生産している。欧州の他の地域も工場建設候補地に挙がっている。 ただ、足かせとなりそうなのは、先月ミュンヘンにあった事業拠点を閉鎖し、100人の雇用を失ったことだ。以降、GWMの欧州事業は中国から行なわれることになっている。この決定は、厳しい市場環境と、現在EUが検討している中国からの輸入車に対する「懲罰的税金の非常に具体的な脅威」によるものだという。 いずれにせよ、欧州での販売には影響しないとされている。英国事業は、IMLという代理店が担当している。