欧州に「本腰」入れる中国メーカー 長城汽車(GWM)が本格上陸 「嗜好」の違い課題に
中国で通用しても欧州では問題視
舞台裏では、GWMは英国最大の自動車ブランドの1つであるミニ(MINI)の新世代モデルにも大きな影響を与えた。 1億8300万ポンド(約370億円)を投じた合弁事業の一環として、BMW傘下のミニの新型EV、クーパーとエースマンが中国の張家港工場で生産されている。同工場で中国国内およびグローバル向けに生産し、2026年からは欧州向けの生産を英オックスフォード工場で行う予定だ。この合弁に伴い、GWMとBMWは自動車を共同開発することになる。 GWMにとって最大の課題は、ドライバビリティよりも車載技術を好む中国市場向けの製品を、そうでない欧州市場へ移植することである。 このことは英国でのファンキーキャットの評価を見れば明らかだ。「航続距離、充電、長距離走行の快適性、使いやすさ、マルチメディア、運転支援」の問題の影に、陽気な外観が隠れてしまっている。AUTOCARは試乗レビューで2つ星半の評点を付けた。 なぜ未完成で物足りなさを感じるクルマを発売したのかとの質問に対し、EVのチーフエンジニアであるロルフ・アルブレヒト氏は、「もちろん改善の余地はありますが、最悪というわけではなく、競争力もあります」と答えた。 では、一体何を目標にしていたのだろうか? 「我々はリーダーになりたいわけではなく、強固なシステムを持ちたいのです。より良いものを作っていきたい。(レビューからの)フィードバックは参考にさせていただいています」
消費者の嗜好に合わせて調整
アルブレヒト氏は、フィードバックは「改善のチャンスを与えてくれる」と述べたが、同時にGWMが「リスクを取りたがらない」ことも認めている。 その代わりに重点を置いたのは、充電速度のアップグレードや、車載ソフトウェアやテクノロジーをより「欧州に適した」ものにすること。例えば、ドライバー監視システムの煩わしさの軽減などだ。 デザインも、欧州の消費者にとって魅力を感じるような変更が加えられる。ここで鍵となるのが、ミュンヘンとトリノに新設された2つのデザインスタジオであり、欧州のトレンドを製品コンセプトに反映させる役割を担う。デザイン部門の責任者アンドリュー・ダイソン氏は、「欧州市場の感触をつかみ、欧州のデザイナーの人材を確保するため」と語っている。 とはいえ、どれだけのものが市販されるのか、予想するのは難しい。クライスラー・クロスファイアやオペル・モッカなどの開発に携わったダイソン氏によれば、GWMの会長である魏建軍氏はすべてのモデルを確認・承認し、毎週金曜日にデザインレビューに参加しているという。「彼は、気に入ったかどうかを言います。最終決定権を持つのは彼です」