『夜明けのすべて』瀬尾まいこさん初の絵本。100年後に思いをはせながら、「またあした」が当たり前の世界にしたい《インタビュー》
――子どもって意外と、大人が見ていないところまでしっかり見て、気づきますよね。 瀬尾 そうなんですよ。子どもって、侮れない。私が教師として中学で働いていたときも、大人が思う中学生と本当の彼らは全然違うって思っていました。小学生も、それ以下の子どもたちも、私たちが想像するよりはるかに物を考えているし、細かいところまで観察している。全然関係ないですけど、このあいだ、娘と一緒に登校している小学生の男の子に、「私18歳やねん」って言ったら「嘘つき。40代後半か50代やろ」とぴったりあてられました。 ――え、すごい! 私、大人の年齢って、今でも全然あてられないです。 瀬尾 自分の母親が30代後半だから、それと比べて……ってことだったみたいですけど、あてずっぽうじゃなく本当にわかっているのがすごい。そういう子どもたちが、この絵本をまっすぐ楽しんでくれるのを見るのは、嬉しかったですね。そもそも私、子どもが大好きなので、触れ合える機会をもてるだけで嬉しかったんですけど。4歳くらいの子が、ちょっと読むだけで「ブラボー!」って言ってくれたのもよかったな。 ――かわいい。 瀬尾 未来のジャングルジムや宇宙人の絵にも食いついてくれて。ページを開くたびにわくわくしてくれるのがわかって、書いてよかったなと思いました。最初のイベントで登場したとき「私、どこから来たと思う? 100年後だよ」って言ったときは、ものすごくすべりましたけどね。半分くらい、付き添いの大人だったからというのもあるけれど。2回目から普通にやったら、ちゃんと楽しんでくれるようになりました。 ――(笑)。瀬尾さんの思う、絵本の魅力を教えていただけますか? 瀬尾 絵本は、読む機会さえあれば、実は子どもだろうと大人だろうと誰でも楽しめるんだな、と。気づいたのは子どもが生まれてから。難しい言葉はひとつもないし、言葉がなくても絵を見ているだけで満足できる。そのおもしろさに、あんまり時代は関係ないのかなって思ったりもします。子どもが好きな「からすのパンやさん」シリーズは、私も子どものころに読んでいましたしね。続編では、カラスのパンやさんに生まれた子ども4羽が、八百屋さんやおそばやさんを営んでいて、みんな独り立ちしたんだなというのがわかって、ちょっと感慨深かった。しかも4羽とも食べ物屋さんになったんだなあ、と。 ――それもまた、時を越えて再会できたことのひとつだと思うと、未来ってやっぱりわくわくすることが詰まっているような気がしてきます。 瀬尾 私、ずっと大人になりたかったんですよ。はやく大人になればそのぶん、自分の力で生きることができて、好きなことができるようになるから、って。だからもともと、未来にはそんなにネガティブなイメージがないんだと思います。もちろんこれから先、年をとって体が弱ったらできないことも増えていくかもしれないけど、でもそれはそれで、楽しいことが待っている気がする。未来はきっと、いいことのほうが多いって信じてます。 ――その想いがタイトルの「またあした」に詰まっているんでしょうか。 瀬尾 単純に「またあした」って言うのがすごく好きなんですよ。子どもって、100年後も一緒にいられるって、信じて疑わないんですよね。主人公とサクヤも、性格はたぶん全然違うけど、あしたと、そのあしたと、そのまたあしたの積み重ねで、ずっと一緒に遊んでいられると信じている。娘もよく、言っていますよ。大人になったら私はイオンのあの店で、友達はこの店でバイトして、一緒に通うんだって。だから、いつまでも「またあした」ってみんなが言えるような世界であってほしいな、と思います。
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