値上げナシ!でも売り上げ3倍「サラダコスモ」躍進の秘密を徹底分析
安い・うまい・栄養あり~8割廃業、もやし業界の革命児
東京・世田谷区のスーパー オオゼキ下北沢店の野菜売り場。ここで最も安い野菜がもやしで一袋38円だ。250gにバナナ3本分の食物繊維があり、さらにタンパク質やビタミンCなども豊富に含んでいるという。野菜を含めた食料品が軒並み値上がりしている中、「価格の優等生」と呼ばれるもやしは大人気。多い日には400袋が売れるという。 【動画】意外すぎる商品が続々!激安もやしで快進撃 だが、もやしの生産者団体からは悲鳴が上がる。2022年11月、日本経済新聞に掲載された意見広告で「安さばかりを追求していては続けていけない状況です」と訴えた。この30年で原料の価格は3倍になり、燃料費など他のコストも高騰。もやしメーカーの8割は廃業してしまったという。 そんな中で値上げをせず、しかも売り上げを伸ばしているのがサラダコスモだ。 「私は入社して10年になりますが、値段の変動はありません」(オオゼキ下北沢店 青果チーフ・石田幸平さん)
山あいに旧中山道の宿場町がひっそりと残る岐阜・中津川市。サラダコスモが運営する「ちこり村」の中にはビュッフェスタイルのレストランがあり、毎日、大勢の客が詰めかけている。「野菜が中心でヘルシー」と、特に女性客が目立つ。 その厨房を預かるのは地域のお母さんたち。78歳になる料理長の向井繁子は旬の食材を駆使し、ひと味違う家庭料理を次々と作っていく。中でもバリエーション豊かなのがもやし料理だ。「豆もやしの天ぷら」は玉ねぎの代わりにもやしを入れたかき揚げ。高温の油でサッと揚げればシャキシャキの食感が楽しめる。80種類が食べ放題で1980円だ。
連日、観光バスが乗り付け、駐車場の入り口には車が並び、すぐにいっぱいに。その駐車場を走り回って車の整理をしていたのが、サラダコスモ社長・中田智洋(73)だ。 「最初にお客様と接する“社員”だから、『一生懸命やっているな』『来て良かった』と思えるように」(中田) 中田はもやし業界に革命を起こした人物でもある。50年前、もやしは真っ白だった。どこのメーカーも塩素系の漂白剤を使い、殺菌していたからだ。「体に悪い」と無漂白に挑んだ中田。1973年に無漂白・無添加のもやしを開発した。 2014年、カンブリア宮殿に登場した時には、当時のことを聞かれ、こう語っていた。 「無言の圧力はすごく感じていました。でも私が無漂白もやしを扱って10年で、日本の全ての生産者が無漂白もやしの生産者に変わりました」 そして今、「値上げをしない」という決意で、再びもやし業界を揺るがしている。 「国民の可処分所得、使えるお金が減る中で、値上げをしても了解してもらえないと思う。だったら値上げをしないための工夫はないのか、と」(中田) 実際、中田は値上げをすることなく、43年連続で黒字を達成している。