妻との「永遠の別れ」 男性がやがて現実を受け入れるまで 「悲しいけれど」妻のいない人生を考えていく
11月23日は「グリーフを考える日」です。グリーフとは大切な人と死別したことによる悲しみや悲嘆、苦悩や嘆きを意味します。必ず誰もが経験する「永遠の別れ」。本記事では、グリーフケアを専門に研究・教育を行っている関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」坂口幸弘センター長と赤田ちづる客員研究員の著書『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』から一部を抜粋し、大切な人を亡くした喪失感や悲しみなどの感情にどう自分なりに向き合い、癒やしていけばよいのか、そのヒントを探ります。 【画像】亡き人に手紙を出せる「天国とつながるポスト」、手紙の送り先
前の記事:大切な人の喪失「悲しみと後悔」にどう向き合うか ■「もう元気になった?」と聞かれるのがイヤで つらい時期や状況によっては、周囲の人の期待にいつものように応えられなくて当然ともいえます。 にもかかわらず、しばしば期待に応えようと頑張りすぎてしまう人がいたりするものです。 まわりの人にどう思われているのかが気になってしまう人もいます。人の目を気にして、無理に元気さをよそおってしまうのです。 10年前に父親を亡くした30代の男性は、「この10年間、自分が家族を支えなくてはいけないと懸命に生きてきた」と話してくれました。
この男性の母親は病気がちだったらしく、父親が亡くなったとき、周囲の人から「これからはあなたがお母さんを守るのよ」とそろって声をかけられたそうです。そして、彼はその言葉のとおり生きてきたのです。彼はこんな言葉も口にしていました。 「20代の頃、まわりの友人は旅行に行ったり、恋愛をしたり、楽しそうにしていました。僕にはその時間がまったくなかったように思います」 SNSを通じて伝わってくる友人や知人のあたりまえの日常に、心が苦しくなることがあります。
「自分だけ取り残されている」というあせりが生まれたり、あふれる情報におぼれてしまいそうになることもあります。 SNS上での人とのつながりは心のよりどころにもなりますが、ふとした言葉に傷つくこともあるでしょう。友人や知人の写真を見て自分だけが取り残されたような疎外感を抱いたりすることもあるのです。 夫を失った40代の女性は、次のように話してくれました。 「夫を亡くして半年ほどたった頃だったでしょうか。家族ぐるみでお付き合いをしていたご夫婦が旅行した際の画像をSNSにあげられていました。