中国・日本人学校のバス襲撃、事件後に削除された「反日動画」…中国人が「日本人学校バッシング」に走るおぞましい理由
● 過激な動画でファンを集めれば ネット通販で稼げる!? 実際、中国のECサイトを見てみても、米国のトランプ前大統領やバイデン現大統領を模したパンチングマシンなど、米国をなじるための商品が多く売られている。その一方で、岸田文雄首相をなじるグッズはほぼない。政策面や政府要人の動きに関して、ここ最近の日本は反日運動のトリガーを引いていないのだ。 にもかかわらず、なぜ「日本人学校」をネタにする動画が拡散されるようになったのか。その一因として考えられるのが、中国の独特なネット空間の在り方である。 中国はスマホ社会だ。新型コロナウイルスの感染が広がっていた時期は、世界でも珍しい「デジタルを徹底活用した監視」によってゼロコロナ政策を持続しようとした。 結局は感染拡大を抑えられずやめてしまったが、このゼロコロナ政策は中国人のスマホ利用を促進する効果を生んだ。スマホユーザーは中高年を中心に都市農村を問わず増え、2023年末時点で11億人弱に達した(CNNIC調べ)。そして、そのほとんどが、前述したドウインやクワイショウ、メッセンジャーアプリの微信(WeChat)を利用するようになった。 ご存じの通り、中国は政府の情報統制によってYouTubeやX(旧Twitter)などの利用が禁じられている。一般読者はこの点について、「中国人はVPNなどを駆使して『ネットの壁』を超え、YouTubeやXを楽しんでいるのでは」と思っているかもしれない。だが実際はそうとは限らず、中国人はあまり「壁の外」に出ようとしない。SNSは知人がいてこそ楽しく、動画サイトも自分たちの趣味嗜好に合うコンテンツがあってこそ楽しめるからだ。 中国国内で満足できるサービスとコンテンツが十分にあるため、特に目的がない限り、「壁の外」に行こうとする人はいないのである。 このガラパゴス化したネット社会では、新たなECの手法が普及しつつある。ドウインなどの動画配信プラットフォームが「ECサイト」としての機能を持ち、動画配信者が商品を販売できるのだ。配信者がドウインで商品を売って儲けるためには、多くの人々に刺さるテーマで面白い動画を配信し、ファン(YouTubeでいうところのチャンネル登録者数)を増やす必要がある。