観光に、出張に、仮住まいに…~安さが魅力の住まいのサブスク
この施設を利用して2年になるという山口礼さんが利用する定住プランは、女性専用の部屋(ドミトリータイプ)を独り占め状態で1カ月4万9500円。周囲のワンルームの家賃相場は8万円近いから、破格だ。料金には水道代や光熱費も含まれていて、無料Wi-Fiの設備も整っている。しかも、敷金・礼金は不要なのでお試し移住にも最適だ。 この北鎌倉も含め、アドレスの施設の多くは空き家だった物件をリノベーションしたもの。リノベーションはアドレスがデザインなどを受け持つが、費用は物件のオーナーが負担する。アドレスは会員からサブスク料金を集め、稼働率に沿った家賃をオーナーに支払うという仕組みだ。 施設のリノベーションを担当するアドレスの坪山励は一級建築士の資格を持っている。仕事で大事にしているのは、極力、改修にお金をかけないことだという。
ダイニングテーブルやキッチンカウンターなども本棚など使わなくなった家具を再利用し、材料費を浮かせるのは常とう手段。 部屋に5面ある壁や床のうち改修するのは基本1面だけ。アドレスの「改修20%ルール」で、例えば床だけでも印象はガラリと変わる。 「やはり思い切ってやめる箇所を決めないとコストカットは難しいので」(坪山) 徹底した節約リノベーションで、1部屋あたりの初期費用を約5万円に抑えている。1部屋あたりの平均家賃収入は2万5000円ほどなので、オーナーは2カ月で元が取れる計算だ。
空き家を資源にして課題解決~全国300カ所に展開
創業社長の佐別當隆志(47)は、アドレスを立ち上げた狙いの一つをこう語る。 「空き家は地方に5軒、10軒どころか、100軒、1000軒とどんどん増えています。東京が主役ではなく地方が主役で、地方に都心の人が行く。地方には空き家が多くあるから供給も増え、ビジネスとしても拡大するのではないかと」 日本が抱える社会の大きな課題の解決につながるビジネスをと、アドレスを立ち上げたのだ。 〇アドレスが目指す課題解決1~空き家を資源として有効活用 北海道北部の稚内と旭川の間に位置する中川町。人口減少から移住者を呼び込もうと、住宅新改築の補助、就農者支援など、さまざまな優遇制度を導入している自治体だ。 町には一般住宅にとどまらず、町営住宅も借り手が減り、空き家となって放置されている建物が目立つ。 そこで動いたのが地域振興課の高橋直樹さん。町営住宅をリノベーションしアドレスに貸し出して、人を呼び込もうとしているのだ。 「中川町はすごくいい町だと思っているので、何か関わりを持って過ごすなど、観光に来ていただければ」(高橋さん)