箱根駅伝5位→5位から3強崩しへ 10時間50分切りに現実味、早大が目論む「ひょっとして…」の条件
「箱根駅伝監督、令和の指導論」 早大・花田勝彦監督/第4回
第101回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)が1月2、3日に行われる。「THE ANSWER」は令和を迎えた正月の風物詩を戦う各校の指導者に注目。早稲田大学の花田勝彦監督は、練習へは自宅から通っているが、週の半分は寮のコーチ部屋に泊まって学生とともに生活している。ほぼ全員が集まるポイント練習がある日以外は、あえて練習には顔を出さずに学生主体で各個人に任せる。それでも選手は着実に力をつけ、選手層も徐々に厚くなり、上位を狙えるムードが高まってきている。3年目となった今シーズン、過去の2年間とは異なる取り組みがあったのだろうか。結果だけを見ていると、何かにチャレンジしているように見えるのだが、果たして。(全4回の第4回、聞き手=佐藤 俊) 【画像】今年の箱根駅伝で話題になった早大の「山の名探偵」 ◇ ◇ ◇ ――2024年シーズンは、駅伝の成績が安定していますが、新たに取り入れた練習などあったのでしょうか。 「練習のメニューは、大きな変化はないのですが、そのメニューをこなせる選手が増えました。昨季ですとチームの半分ぐらいしか消化できなかったのですが、今季は夏合宿に参加しているメンバーのほぼ全員ができるようになりました。そうなると、練習のレベルも自然と上がってきて、選手層も厚くなりました。出雲駅伝は6位、全日本(大学駅伝)は5位ですが、その結果に安堵はしても、満足している選手はいなくて、なかには『もっといけるでしょう』という選手もいました。2つの駅伝ではチームの力がだせていないので、箱根では全員がベストの走りができるとおもしろくなるかなと思っています」 ――練習の成果が今季の成績に繋がっている感じですね。 「結果に対しての裏付けがないと選手もチームも強くなりません。選手の中には練習しなくても走れちゃう子がいるんです。でも、私はそういうタイプではなかったこともありますが、先の競技人生を考えると、練習=試合という結果の方が継続していけると感じています。結果に対して練習の裏付けがちゃんとあったほうが、どんな状況になっても選手もチームも簡単に崩れないんですよ。でも、1発当てにいくようなチーム作りをしていくと当たった時はいいけど、そういうチームは一度崩れると立て直すのが難しい。石橋を叩いて渡るじゃないですけど、普段の練習を着実に積み重ねていくことが大事だと思っています」 チームは、エースの存在が大きく、その浮沈がチームの結果に大きな影響を及ぼす。早稲田大も過去、大迫傑を始め、太田智樹らエースがいたが、今季は3年生がエースの看板を背負っている。 ――エースは山口智規選手ですが、他選手は、山口選手を遠い存在として見ているのか、それとも追い抜くべき目標としてとらえているのでしょうか。 「伊藤(大志・4年)は、負けたくないという意識でいますが、他の選手は、『山口さん、強いな』と思っている子が多いです。うちには学生のトップレベルの山口と伊藤、石塚(陽士・4年)がいますが、彼らは駒澤大の篠原(倖太朗・4年)君のように、どんな大会でも確実に走るレベルではない。どんなレースも確実に戦える選手をつくっていきたいですし、長屋(匡起・2年)や工藤(慎作・2年)、山口(竣平・1年)らはひょっとしたら山口のようになっていくんじゃないかなという雰囲気は持っています」 ――工藤選手は、出雲も全日本も快走し、評価が高いのではないでしょうか。 「工藤は、早稲田に来る際、5区で区間賞を獲りたい。将来は、マラソンをやって、(2028年の)ロサンゼルス五輪に出たいと目標が明確でした。箱根のことはもちろんよく話をしますが、五輪から逆算してどのタイミングでマラソンに取り掛かればいいのか、どのレースを考えればいいのかなど、そういう具体的な話をしています。そういう先を見ている選手は、伸びていくので、今後が楽しみです」