落合GMに嫌われた男達はなぜ原巨人で再生したか
快音を残したT-岡田の強烈な打球は三塁ベース付近を襲った。4日、東京ドームでの交流戦の巨人対オリックス。9回一死満塁。三塁の吉川大幾(22)は、まるで獣のように飛びついて、その打球をキャッチすると、すぐさま起き上がって三塁ベースを踏み一塁へ大遠投。ややボールが上へそれたが長身のアンダーソンが小さくジャンプして手を伸ばすと、一瞬にして併殺が成立しての劇的ゲームセット。東京ドームが大歓声に包まれる中、吉川はもみくちゃにされ、T-岡田は、信じられないような顔つきで呆然と立ち尽くしていた。お立ち台には、スーパープレーで逆転の危機を消した吉川と来日初の完封勝利のマイコラスが呼ばれた。 「ジャイアンツに拾っていただいた立場なので凄い感謝です」 吉川の目がうるんでいた。 前夜は、2013年オフの契約更改で屈辱の大幅ダウン提示をされ、事実上の戦力外となって巨人に入団した井端弘和(40)がサヨナラ打を打った。5月12日の広島戦で「レフト・3番」でスタメン抜擢されて活躍し、お立ち台に上がった堂上剛裕(30)も、2014年に戦力外として中日を追われた男。そして、この日のヒーローの吉川が、中日の落合GMに戦力外を通告されたのも、わずか7か月前だった。 名門、PL学園では主将として春夏の甲子園に出場。大阪府予選では5本もホームランも打った。2010年にPL学園からドラフト2位で大型内野手として中日に入団。PLの先輩でもある立浪和義2世の期待を寄せられ背番号「3」をもらった。2年目にはスイッチに転向したが、足の速さ以外は攻守に中途半端で、潜在能力を発揮できぬまま、わずか4年で昨年10月末に落合GMから戦力外通告を受けた。ソフトバンクから育成の亀澤恭平(26)が獲れたことで、ポジションが重なり、首脳陣からその練習態度などについて覚えのよくなかった吉川は、22歳の若さで職を失うことになった。 合同トライアウト参加の準備を進めていたときに巨人から秋季キャンプ参加の連絡が入った。年齢的には大学生と同じで、内野が守れ、足もあり、コンパクトでパンチもある打撃は、若手育成をテーマとする巨人にとっては魅力的だった。 それにしても、なぜ落合GMに嫌われた男たちは、新天地の巨人で揃って再生するのだろうか。3人に共通しているのは「勝利に貢献したい。仕事をしたい」の思い。そして、吉川、堂上の2人は、口を揃えて「拾ってもらったことに感謝したい。恩返しを」と言うのである。