「どうあるべきか」を追求し、価値を再定義する。SUBARUと小川秀樹氏のコネクティッド領域での挑戦
定義済なものを捉え直して「再定義」する
DD:なるほど。SUBARUだからこそ、新たな可能性を創出できるかもしれないと考えているわけですね。たとえば、小川さんが開発した「SUBAROAD(スバロード)*」も、SUBARUならではの独自性ある取り組みでした。 *最短距離を案内するわけではない道案内アプリ。従来のカーナビでは出てこないドライブコースを提案し、ドライブの愉しさを提供する。 小川:ナビの登場によって、地図を見なくなりましたし、道の覚え方も学ばなくなりました。移動の最適化という面では非常に便利になりましたが、地図を見ながら適当にドライブしているときのドキドキ感がなくなってしまったと考えると、もったいなさがありますよね。 僕は、クルマはただの移動手段ではなく、(ファッションのように)自分を表現するものだと思っています。そうした「自分を表現するもの」に乗って、どこかに行くまでのプロセスをもっと楽しめるのではないか、と定義したのが「SUBAROAD」でした。 普通、企業としては競合がいるなかで、より高性能なナビを開発することが大事なのかもしれません。でもSUBARUなら、そこばかりを追い求める仕事以外も受け入れてくれています。 DD:確かに初めてクルマを手に入れたとき、「便利」と思う前に底しれぬワクワク感がありました。 小川:そうでしょう。僕自身も18歳の車乗りたてのとき、意味もなくドライブする面白さを原体験として持っています。運転というのは無限の選択肢にあふれているはずなのに、ナビに従うことで、最初から自分自身で何も選択しなくなってしまっているんです。 テクノロジーが進化すればするほど、さまざまなものが最適化されて効率重視になります。それはそれで機能的ではあるのですが、たとえば、SUBARUユーザーにヒアリングしてみても「ナビからわざと外れてドライブすることがある」「ただクルマを走らせてみてみたい」といった意見を持っているユーザーが多かったんですね。つまり、クルマでの移動=最短距離という定義済されたものを捉え直して、SUBAROADというドライブアプリで再定義してみたら、本来のクルマの面白さを引き出すことができたんです。