「越境攻撃」成功もゼレンスキー大統領は「はしゃぎすぎ」と専門家…アメリカ、フランス、ドイツがウクライナの「沈黙」が示す意味
ロシアは大人、ウクライナは子供
「ロシアは何の罪もないウクライナに侵略戦争を仕掛けたのです。ウクライナの勝利に欧米のメディアが沸き立っているのは理解できます。ゼレンスキー大統領も戦果を強調していますが、地図でウクライナが“占領”したクルスク州をご覧になれば、どなたも違和感を持たれるでしょう。広大なロシアの領土に比べ、ほんのわずかな面積に過ぎません。ここはやはりウクライナとロシア、NATO(北大西洋条約機構)加盟国の動向を冷静に分析することが何より重要なのです」 佐瀬氏は「国土の広さも人口の多さも、そしてゼレンスキー大統領よりプーチン大統領のほうがはるかに狡猾という点でも、ロシアが大人、ウクライナが子供であるのは明白です」と指摘する。 「ロシアは自国で武器を製造し、足りない分は調達しています。さらに近年はロシアと中国の関係は悪化していると指摘されてきましたが、両国関係は改善されたようです。経緯を振り返れば、2023年3月、中ロ首脳会談でプーチン大統領は中国に武器供与を要請しましたが、習近平国家主席は拒否。さらに共同声明で『国外に核兵器は配備しない』と明記したにもかかわらず、数日後にプーチン大統領はベラルーシへの戦術核配備を発表し、習主席のメンツが潰れてしまったのです」
追い詰められているのは誰?
このため中ロ関係は悪化したと報じられていたのだが、今年5月、プーチン大統領は中国を訪問、習主席と会談した。世界のメディアがこれを大きく報じ、「両国は結束を確認した」と伝えた。 「これまで北朝鮮がロシアに相当数の武器、弾薬を提供してきました。それに加えて中国からも様々な援助を受けられる可能性が浮上したわけです。西側諸国はロシアを経済的に干上がらせ、戦争継続を困難なものにしようと制裁を科してきました。しかし“抜け穴”だらけで効果が出ていません。ロシア軍の兵站は機能しており、東部戦線で攻勢を続けています。一方のウクライナは基本的にNATO加盟国の武器供与だけが頼みです。おまけにNATO加盟国に、いわゆる“援助疲れ”が認められるのも事実です」(同・佐瀬氏) もしアメリカ大統領選でトランプ候補が勝利すると、ウクライナへの支援は大幅に削減される可能性さえ取り沙汰されている。むしろ追い詰められているのはゼレンスキー大統領かもしれないのだ。 「越境攻撃は今のところ成功しており、欧米のメディアも好意的に報道しています。ウクライナ国民も戦意を鼓舞されたかもしれません。しかしアメリカ、フランス、ドイツの動向を見ていると、これまでに公的な発言として越境攻撃を評価したことがないのです。はしゃぐゼレンスキー大統領とは好対照ですが、米仏独の“沈黙”は重要なサインではないでしょうか。3カ国の本音は、ウクライナの越境攻撃を苦々しく見ている可能性さえあると思っています」(同・佐瀬氏)