科学技術の研究設備、「複数大で共同利用」条件に文科省が導入支援…国立大などの8割が耐用年数オーバー
文部科学省は、科学技術分野で高度な研究設備を導入するため、新たな予算の枠組みを創設する方針を固めた。複数の大学が共同で利用することが条件で、汎用(はんよう)性の高い1億~10億円の先端設備が対象となる。総額で127億円の予算規模を想定しており、研究設備の整備を進めることで、日本の研究力向上を目指す。 【図解】新たな予算の枠組みのイメージ
文科省が今年2~3月、国立大学など国内94機関を対象に実施した調査によると、研究設備の約8割が耐用年数を超えていることが判明した。そのうち約7割は、耐用年数の2倍以上の期間が経過していた。従来はそれぞれの大学や研究機関が整備していたが、予算不足で更新できず、老朽化が進んでいることが背景にある。
同省は脆弱(ぜいじゃく)な設備が日本の研究力低下の一因とみて、整備コスト圧縮のため、複数の大学で設備を共同利用する予算の枠組みを新設し、設備の充実を図ることとした。具体的には、化学物質を分析する実験装置「核磁気共鳴装置(NMR)」や、液体ヘリウムの再利用を可能にする「ヘリウム液化装置」などが想定されている。
予算を要求する段階で、共同利用する大学や研究機関を具体的に示す必要がある。同じ地域にある大学・企業の研究者や、専門分野の異なる研究者同士の共同研究を促すことも期待されている。
文科省の科学技術・学術政策研究所が発表した「科学技術指標2024」によると、注目度が高く、他の論文に引用された回数が各分野で上位10%に入る「トップ10%論文」の数は、世界で13位と低迷している。20年前の4位から大きく後退し、韓国(9位)よりも低い順位となっており、日本の科学技術分野における研究力の低下が危惧されている。