機体空中分解で102人死亡! 規制緩和が生んだ史上最悪の航空会社、インドネシア「アダム航空」をご存じか
安全基準強化も事故再発
墜落事故から半年後の2007年7月、欧州委員会はインドネシアの全ての航空会社に対し、欧州連合(EU)域内への飛行禁止処分を発表した。これにより、 「インドネシアの航空会社は危険である」 という強いメッセージが世界に発信され、観光客誘致に力を入れなければならないインドネシアにとっては大きなダメージとなった。 この屈辱的な処分を受け、インドネシア政府は国内の54の航空会社に対して安全監査を実施し、名誉回復に向けて努力を始めた。そして、2007年3月には 「安全基準を満たしていない七つの航空会社の運航を3か月以内に停止する」 という厳しい措置を発表。そのなかにアダム航空も含まれ、安全基準を「中」ランクに引き上げた後、運航を再開した。 しかし、2008年3月、アダム航空は再び事故を起こした。今度は、175人を乗せた航空機がバタン島の空港で滑走路をオーバーランするという事故であった。この事故を受け、インドネシア政府はアダム航空に対し、21日間の猶予を与え、事業停止の判断を迫った。アダム航空はその日中に半数の航空機を運航停止にした。 その後、アダム航空に出資していた投資会社も資金を引き上げ、2008年3月18日には、アダム航空は全ての航空機の運航を停止し、事業を終了した。
欧州進出、依然厳しい制約
インドネシア政府は新規参入規制を強化したことで、アダム航空だけでなく、ずさんな体質を持つ航空会社が一掃された。この取り組みが評価され、EUからの乗り入れ禁止処分は解除された。 しかし、2024年11月18日現在、インドネシアの航空会社が欧州に乗り入れているのは、ガルーダ・インドネシア航空のジャカルタ~アムステルダム線のみとなっている。そのため、インドネシアから欧州に行く場合、 ・タイ ・シンガポール ・UAE など他国を経由するルートが主流となり、同国のハブ空港戦略には制約がかかっている。 もちろん、人口が多く急成長しているインドネシアでは、国内線や近距離国際線、中東路線の市場が拡大している点もあると考えられる。しかし、アダム航空の事故から時間が経過した今でも、その傷跡は残っているのかもしれない。