戦争犯罪で逮捕状が出たICCのネタニヤフの誤算、「トランプ復権」でおののくイラン、混迷の中東情勢の行方は?
トランプ復権におののくイラン
トランプ氏の復権で首相が目論んでいるのはイランの核施設攻撃に向けた積極的な米国の軍事支援だ。バイデン大統領は核施設や石油関連施設への攻撃にストップをかけたが、トランプ氏は「まずは核施設を攻撃し、他のことはその後に考えればいい」などと容認の姿勢を示している。 イランは最近も国際原子力機関(IAEA)との対決姿勢を強め、ウラン濃縮活動を強化する方針を示している。核爆弾製造には濃縮度90%のウランが必要だが、イランはこのレベルに容易に到達する濃縮度60%の六フッ化ウランを10月末の時点で、182キロ保有しており、その気になれば数週間で核爆弾3~4個を製造できるとされる。 だがネタニヤフ首相によると、この核施設を防衛するためロシアから導入配備した地対空ミサイルシステム「S300」4基は4月と10月のイスラエルによる攻撃で破壊された。このため軍事専門家によると、イランの防空網は「裸の状態」で、中部ナタンズなどの核施設は容易に攻撃にさらされる恐れが強い。 イランは表面上、強気の姿勢を崩していないが、実際は「トランプ政権の登場に恐れおののいている」(ベイルート筋)。同筋によると、イランが先月、米政府に対し「トランプ氏の暗殺を画策していない」と文書で釈明したのも、トランプ氏の復権に備えたものだったようだ。「中東ではイランが米国に泣きついた」とみられているという。
佐々木伸