「年配の男性客から、何だその黒い爪はと言われたりも…」三浦しをんが語るネイルという“ゆびさきの魔法”
本屋で働いていた時に年配の男性客から…
――マニキュアやジェルネイルは、美しさはもちろん、爪の保護にも役立つそうですね。 三浦 そうなんです。実際に、ギタリストや三味線奏者など、爪で楽器を演奏される方のなかには、爪を保護する目的でマニキュアをする方もいらっしゃると聞いたことがあります。 それに爪のケアは、実は健康面でとても大事だということを、私はネイリストさんに教えてもらいました。信頼できるネイルサロンで定期的に爪のケアをしてもらうことは、自分の健康チェックにとても役立つと思います。 ――本作でも、男性の巻き爪ケアや、高齢者施設で爪から健康状態をチェックする福祉ネイリストの話など、健康にかかわるネイルのエピソードが描かれていました。 三浦 福祉ネイリストについては、本作を書くにあたって私も初めて知りました。ネイリストさんに話を聞いたり、自分で調べたりしたなかではじめて、高齢者や障がいのある方に、癒やしや元気を届ける福祉ネイリストという仕事があることを知ったのです。ただ、コロナ禍で対面の取材がまったくできなかったので、本作ではそういう仕事があるということを知ってもらえたらいいなということで、会話の中で少しだけ登場させるくらいにおさえました。 ――爪のおしゃれは気分を明るくしてくれます。「花園にこにこ苑」のおばあさんたちが、ネイルを施術してもらって喜ぶ様子は、目に浮かぶようでした。以前は「マニキュアをしている=派手」と思われていた時代もありましたが、昔からネイルを楽しまれている三浦さんは、ネイルで不快な思いをされた経験はありますか? 三浦 私は爪を黒やシルバーに塗っていることが多かったので、本屋で働いていた時に、年配の男性客から、「何だ、その黒い爪は」と言われたことがあります。でも、「綺麗ですよねー。自分で塗ったんですよ」と堂々としていると、「うん、まあ…」と相手がひるんで(笑)、認められるようになっていくので、あまり気にしてませんでしたね。女性のお客さまは、「あなたの爪、いいわね」と声をかけてくださる方も結構多くいらっしゃいました。 昔は爪のお手入れが健康に関係するという考えも浸透していませんでしたし、そもそもマニキュアをしている人自体がそんなに多くなかったので、珍しいというのはあったのかもしれません。 私は「マニキュアOK」の職場でしか働いたことがないのでよくわかりませんが、飲食店をはじめとする接客業だけでなく、社内の人と接することが主なはずの事務のお仕事でも、「マニキュア不可」のところが多かったような気がします。