韓国・尹大統領、14日に弾劾可決は確定的か 大混乱の国内は右派・左派ともに「尹大統領の排除で一致」と政治学者
韓国で今、歴史的な大混乱が生じている。尹錫悦大統領が3日夜、突如として戦時下などを想定した「非常戒厳」を宣布した。しかし、国会に集まった議員によって解除を要求する決議案が可決。尹氏も受け入れ、わずか6時間で解除された。その後、警察や検察の捜査が進む中、非常戒厳の宣布に関与し、戒厳軍を指揮、「内乱の主要任務に従事」したとして金龍顕前国防相が逮捕されたが、その金前国防相が留置所で自殺未遂。また、大統領室や警察庁が家宅捜索されるなど、尹大統領の「内乱首魁」容疑を視野に入れた捜査も本格化している。 【映像】“非常戒厳”で国会に突入する韓国の軍隊 野党側は1度投票総数が充足数に足らず、不成立に終わった弾劾訴追案を12日に再び発議、14日には採決が行われる見通しだが、専門家によれば今回は可決が確実視されているという。『ABEMA Prime』では韓国情勢に詳しく、最近『比較のなかの韓国政治』(有斐閣)という本を出した同志社大教授の浅羽祐樹氏に、尹大統領が非常戒厳で起こした大混乱の理由、弾劾訴追案の行方を聞いた。
■2度目の弾劾訴追案、可決は確実視
「民主化後、1987年に改正された憲法にも残された戒厳は本来、「戦時・事変又はこれに準じる国家非常事態」に限って発動されるものだが、少数与党の国会で自身の政策が法案、人事、予算の形で思い通りに行かなかった尹大統領による “自己クーデター(self-coup)”だ」と浅羽氏は言う。「脅迫観念、しかも「包囲されたマイノリティ」意識に囚われ、ある種の陰謀論に陥っていた」と重ねる。「国会が思い通り動かないので、それを打開するために国会と選挙管理委員会に軍隊を送ってしまうというのは、明らかに憲法違反である」。2度目の弾劾訴追案については「与党・国民の力からも造反が8票以上出ると可決で、大統領の権限行使停止、国務総理が権限代行に就くという流れになることは、遅ればせながら当然とされている」という。 さらに「国会だけでなく、国会議員一人ひとりが憲法機関だ。国会は政府・大統領がめちゃくちゃした時にしっかり牽制をして、チェック・アンド・バランスを効かせ、憲政秩序をギリギリのところで保つという使命が、与野党、左右を問わず、国会、国会議員に課せられている。再び票決に参加もしないとなると、尹大統領に「与(くみ)」し続ける「党」は尹大統領と共滅の道を歩むことになる」と、前回は与党議員のほとんどが投票に参加しなかったものの、今回は可決に票を投じる議員が一定数出るとの見通しを語った。 2度目の弾劾訴追案が可決された場合の流れはどうなるか。まず憲法裁判所における審判に移るが、法律上では180日以内に決定が出る。朴槿恵元大統領が弾劾制度によって罷免された際は約3カ月、盧武鉉元大統領の場合は罷免にならなかったが、約2か月だった。浅羽氏の見立てによれば「3カ月前後で憲法裁判所の決定が出て、罷免となればそこから60日以内に大統領選挙になる。当選と同時に就任する」と説明。弾劾訴追案が国会で可決された場合には、その時点で尹大統領の大統領としての権限行使は一切できなくなり、代わって国務総理が権限を代行することになる。