オリンピックを今夏に控えたパリ装飾芸術美術館で、ファッションとスポーツの特別展を巡る
今回の特別展は、ラコステがスポンサーとして名を連ねているが、そのラコステのかつてのポロシャツも展示されている。
同ブランドはテニス選手だったルネ・ラコステが、現役引退後の1933年に立ち上げた会社である。ラコステは現役時代に、ポロの選手が着ていた襟付きの半袖ニットを競技用ユニフォームとして使った。そのためポロシャツが「シュミーズ・ラコステ」と呼ばれていた時期もあったそうだ。
パリ・オリンピックで期待される新たな両者の形
20世紀後半になると、スポーツウエアはさらに私たちの生活に浸透してきた。リラックスした装いは、普段の服装により取り入れられていき、衣服により締め付けられていた体は解放されていった。 仏ヴォーグ誌は1983年に『ヴォーグ・スポーツ』を創刊。スポーツウエアが日常のワードローブに組み込まれていった実情を表している。スポーツウエアはスポーツだけのものではなく、日常における価値のひとつになっていったことが、これら展示からよく分かる。 さらに、アスリートがファッションデザイナーに転向したり、ファッションデザイナーがオリンピック参加チームの公式ユニフォームを手掛けたりするなど、ファッションとスポーツは至るところで混ざり合っていった。1998年のフランスで行われたサッカー・ワールドカップ決勝。フランス対ブラジルの試合前セレモニーで披露されたのは、300人のモデルがスタジアムをウォーキングするイヴ・サンローランのショーだった。
現在、スポーツウエアは、私たちの日常に違和感なく同居している。アディダスとヨウジヤマモトが立ち上げたY-3に代表されるように、スポーツ用品メーカーとラグジュアリーブランドのコラボレーションは大きな成功を収めた。 またファッションブランドのマーケティングにおいて、アスリートは大切なイメージ戦略のひとつもある。ディオールは、2021年からサッカーのパリ・サンジェルマンと公式ワードローブのパートナーシップを結んでいる。 ファッションとスポーツは、今やお互い頻繁にインスピレーションを交換しながら、次々と社会に新しい創造をもたらすようになった。これからも次々とスポーツとファッションの融合が行われるだろう。 今パリでは、至るところで間近に迫ったオリンピックに関するロゴなどを見かける。ファッションにおける発表の場として世界的に重要視されるフランスにおいて、オリンピックはきっと、私たちにさらに興味深い見せ方を提案してくれるに違いない。 参照:パリ装飾芸術博物館「MODE ET SPORT, D'UN PODIUM À L’AUTRE」