転倒してもフィギュア欧州選手権の表彰台独占のロシア3人娘に世界選手権で勝つ術はあるのだろうか、という考察
元全日本2位で現在、福岡で後進を指導している中庭健介氏は、欧州選手権をこう総括した。 「コストルナヤは4回転を跳びませんが、1歳年上ということもあって、演技にずば抜けた品と美しさがあり、ジャンプの質も高く演技構成点の評価で一歩抜けています。やはり4回転を跳ぶには、そこに集中するため、時間が割かれ、トルソワなどは音楽表現が乏しいケースが見受けられるのです。しかも、コストルナヤはSPで一人だけトリプルアクセルを跳ぶことができます。今回は約7点差でしたが、シェルバコワ、トルソワと10点弱くらいの差をつけることができるのが優位点です。ロシア選手権ではシェルバコワがフリーで逆転しましたが、彼女に勝つには、4回転3本をフリーで成功させることが必要最低条件となります。しかし、今回、シェルバコワは小さなミス(回転不足)と転倒のミスをしましたし、トルソワも4回転で2度転倒しました。そうなると、トリプルアクセルを2本入れ、しかも、演技構成点のあるコストルナヤが有利です。またシェルバコワとトルソワを比較するとシェルバコワは、基礎点の高いルッツジャンプが得意で、若干ですが演技構成点でリードしています。トルソワは、上の2人との差を埋めるためにSPでトリプルアクセル、フリーで4回転を4、5本入れることを考えていたそうですが、うまくいきませんでした。でも、それらをすべて成功させたときは面白いでしょうね。完成形を見てみたい気がします」 3人娘の比較でいえば、コストルナヤとシェルバコワが僅差の争いで、トルソワが、一発逆転の可能性を秘めていながらも、まだ一度も成功しておらず、完成度に劣り、若干、上の2人とは離れた3位という現在の序列が浮き彫りになった。 3月にカナダのモントリオールで開催される世界選手権では、再び、この序列のままロシア3人娘の表彰台を見せつけられることになるのだろうか。 中庭氏は3月の世界選手権の展望をこう語る。 「世界選手権でも、この3人の力が飛びぬけていることは間違いありません。欧州選手権では、フィンランドの選手など、いい選手が出てきていたのですが、彼女らの陰に隠れてしまいました。しかも、この3人がお互いにライバルの2人に勝つにはどうすればいいかを考えて、取り組んでいるので大会をこなす度にレベルが磨かれ成長しているのが特徴です。4回転は、踏み切りなどのわずかなミスが転倒の大きなミスにつながりやすく、それを武器にするシェルバコワ、トルソワにはリスクがあります。ただ転倒しても3回転ルッツ相当の得点はキープできるので、表彰台争いへの影響はありません。4回転のプログラムを今季貫き通したシェルバコワ、トルソワの慣れを考えると、そろそろコストルナヤがノーミスでも勝てないという段階が来てもおかしくないのです」 シェルバコワが2種類の4回転を3本、トルソワが3種類の4回転を4、5本成功させたときにSP、フリーでトリプルアクセルを3本跳んでくるコストルナヤにどこまで対抗できるかが注目だろう。 そして気になるのはGPファイナル4位からのリベンジ、”打倒ロシア”に燃える紀平梨花(17、関大KFSC)の可能性だ。紀平は2月4日から韓国で開催される四大陸選手権に出場、20日からはオランダ・ハーグでのチャレンジ杯に出場し3月の世界選手権へ向かう。