日銀総裁の利上げ慎重姿勢、円安進行で正常化ロジック損なわれる恐れ
日銀のメッセージに混乱させられたと投資家が言っていたように、この動きが世界的な市場混乱を招くきっかけとなった。
その一方で7月の利上げは、円安が進むと家計や企業のインフレ懸念が増幅するため、利上げ自体は受け入れられやすくなることも示した。7月会合を前に一部の政治家からも利上げを求めるまれな声が出ていた。
植田総裁が11月下旬の日本経済新聞とのインタビューで利上げが「近づいている」と述べた際、12月か1月に利上げが迫っているという明確なシグナルが得られたと受け取めた市場参加者もいた。その後、日銀から発表された氷見野良三副総裁の1月の講演予定は、次回1月23、24日の会合へ向けた地ならしのように見えた。
植田総裁は先週19日の会見で来年1月利上げの可能性を否定せず、不確実性の全てが解消されるのを待つ必要はないと述べたが、国内の賃金動向や米国の政策の影響といった大局の見極めには時間を要するとしたことに市場は反応し、円は下落した。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは20日付リポートに、植田総裁の発言からは「利上げ期待の後退や円安進行を防ごうとする気配は全くと言っていいほど感じられなかった」と記した。
植田総裁は25日の経団連審議員会で講演を予定している。例年は通常それほど市場で注目されることはないが、コミュニケーション手法を巡って市場のストレスが高まる中、このイベントは日銀の考えをより明確に伝えるチャンスになるかもしれない。為替トレーダーは、総裁発言のトーンに調整の兆しが見られるかどうかを注視することになる。
原題:Ueda’s Caution Risks Yen Punching Holes in BOJ Policy Logic(抜粋)
--取材協力:梅川崇.
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Toru Fujioka, Erica Yokoyama