朝市のおかあさんも英語で…大都市パワーに頼らず45万人を呼び込む「飛騨高山」 外国人が「また来たい!」と痛感する納得の理由 #令和に働く
積み上げてきた国際感覚が強みに
訪日客の増加に伴うオーバーツーリズムの問題は、いまや国内全体の課題です。地元住民と観光事業者とのあいだでインバウンドに対する意識の乖離が出る懸念について、永田氏は「やはり『観光が住民生活にも寄与している』と思ってもらうことが大事。観光は、裾野が広い分野ですので、観光業だけが潤うわけではなく、そこからさまざまな形に派生することが、市民生活にいい影響を与えるのだと思ってもらえるように丁寧に説明していく必要があります」と話します。 ただ、もともと高山市は山の中にあるという地理的な特徴から、住民に「観光客をもてなそう」というマインドが根付いているようです。「来にくい場所なので『しっかり歓迎したい』という思いは、昔からずっとあると思います」と永田氏。さらに、前述の昔から国際交流を進めてきたという背景も、外国人観光客を迎え入れるうえでプラスに働いているといいます。 「高山がほかの地域よりも恵まれていると思うのは、長い間、国際交流などに取り組んできたこと。訪日観光客の方とは言語も商習慣も生活も違いますが、住民はそこに対して相手の気持ちを考えて理解する気持ちがある。それはこれまでに積み上げてきたもので、高山の強みのひとつでもあるのかなと。また、市民にはなんとなく『海外の都市と姉妹都市になっている』という意識があるのでは。『世界各地とつながっている』という意識を持つことは大事だと思います」
英語でのコミュニケーション
多くの中学生、高校生の目標に…30年以上続く「英語スピーチコンテスト」 そんな高山市の国際交流に取り組む姿勢は、30年以上続いている「英語スピーチコンテスト」にもみることができます。飛騨高山国際協会が主催する中学生、高校生を中心に市民から希望者を募って行う年に1度のコンテスト。学生上位者を海外都市へ派遣する取り組みで、今年は米国デンバー市へ派遣し、学生らは現地の高校生との交流やホームステイを体験しました。 「これまでに多くの子どもたちを海外に派遣し、異文化に触れてもらいました。『ここで英語に目覚めた』という学生もいます。また、小学生が登校途中に外国人観光客に普通に朝の挨拶を行ったり、学校の授業で外国人のインタビューを行ったりする機会をつくれることは、とても恵まれていますよね」 学生たちが英語を身近に感じやすい環境を作り上げてきたことは、国際交流の意識を醸成する重要な取り組みのひとつといえそうです。 地元の居酒屋や朝市でも英語でやりとり こうした英語に対する取り組みや観光客を歓迎したいマインドは、居酒屋や有名な朝市でも見ることができます。 「多くの観光客が訪れる時期は居酒屋も満席で、ひっきりなしにお客さんが来ます。そんなとき、外国人観光客の方が来られると、店のご主人は英語で『ごめんなさい、席がいっぱいだから入れません』と説明するんです。また、朝市でも売り手のおかあさんが英語で『全部でいくらですよ』と説明していますね。高山では、そんなふうにお店の人たちが外国人観光客の方とコミュニケーションを取って商売しているんです」