インバウンドは回復したが、商業施設は経営再建に閉店も…2024年の鹿児島経済を振り返る
新型コロナウイルス禍による離職などを受け、バスやタクシー運転手不足が顕著となった。4月にはタクシー事業者の管理下で一般人が有料で客を運ぶ「日本版ライドシェア」が導入され、11月からは伊佐市の事業者が運用を始めた。 海と空の便はコロナ禍からの回復を印象付けた。クルーズ船の県内寄港回数は過去最多に迫る151回。鹿児島空港では7月の上海線を最後に国際定期便4路線が全て復活した。ただ便数はコロナ前の半分ほどにとどまっている。 ■「酒造り」が無形文化遺産 本格焼酎など日本の「伝統的酒造り」が12月5日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。鹿児島県内でも焼酎の海外認知度向上や地域活性化へ期待の声が多く上がり、「焼酎を世界へ売り込もう」という機運が高まった。 登録されたのは、麹(こうじ)菌を使って原料を発酵させる日本古来の技術。杜氏(とうじ)や蔵人(くらびと)が各地の気候風土に合わせて発展させてきた。鹿児島では芋や黒糖などを主原料とする焼酎が今の暮らしに根付いている。政府は登録を機に国産酒類の輸出拡大や観光振興、地域活性化に結びつけたい考えを示す。
県内の本格焼酎出荷量は、国内人口減による市場縮小や嗜好(しこう)品の多様化などから減少傾向にある。官民一体となり海外市場開拓を進めるものの、既に「SAKE」として高い知名度を誇る日本酒と比べると大きく後れをとっている。 鹿児島県には100を超す蔵元があり、その多様性は他に類を見ない。県酒造組合の浜田雄一郎会長は「職人魂が生み出す高付加価値を国内外にアピールし、焼酎造り体験や現地での食と組み合わせた展開も考えたい」と、今後の好循環に期待を寄せる。 ■サンロイヤル新築移転発表 創業51年となる鹿児島サンロイヤルホテル(鹿児島市)は8月2日、建物の老朽化のため移転新築する方針を発表した。移転先として県有地で同市本港区エリアの住吉町15番街区を希望、要望書を県に提出した。 同社は、市や県が出資して立ち上げた第三セクター。ホテルは1972年の太陽国体を前に埋め立てられた与次郎ケ浜の中核施設として73年に全面開業した。建物は2017年、耐震化が必要と診断されたが、50億円前後の費用が見込まれるほか、負債総額も50億円近くあり断念。県有地などで長期定期借地できる移転先を探していた。