藤田菜七子27歳、永野猛蔵22歳が引退の“異常事態”…「騎手のスマホ不正使用」本当の問題点とは何か?「たかがスマホという感覚でいる限り…」
関係者が「たかがスマホ」という感覚でいる限り…
よく「たかがスマホで騎手を辞めるなんてもったいない」という声を聞く。確かに藤田も永野も非常に惜しい才能だが、辞めさせられたわけではなく、自ら騎手免許の取消を申請したのだ。それに、「たかがスマホ」というが、競馬法をもとに競馬を施行している日本では、原資となる馬券の合法的な発売の根幹に関わる重大な問題なのである。「海外ではレース前のスマホ通信は禁じられていないのに日本だけ厳しいのはおかしい」という声もあるが、それが許されるのは、競馬以外のギャンブルも認められている国だからか、あるいは馬券が発売されていない国だからだ。その理屈を日本に当てはめることはできない。 関係者が「たかがスマホ」という感覚でいる限り、また同様のことが繰り返されるのではないか。レースを控えた騎手にとっては「たかがスマホ」ではないから、「重大な非行」とみなされ、重い処分が下されるのである。 ヨーロッパの競馬主催者にとって「お客様」というと馬主という感覚だろうが、日本で「お客様」というと、馬券を買うファンである。ファンは、自分の楽しみのために金を賭けているわけだが、同時に、「命の次に大事」とまで言う人もいる金を、主催者に、いや、レースに預けている、という感覚でもあるはずだ。不信感を抱かずに金を預けられるような状況が望まれる。ギャンブルという、いかがわしいイメージがついて回るものだからこそ、厳正で公正な運用が求められるのだ。
「ルールがおかしい」という主張は理解を得られない
JRAによると、監督官庁の農林水産省からも強い指導をされており、開催前、開催中の通信機器に関する運用体制は、今後、厳しい方向に進んでいくようだ。 違反した騎手たちも、調整ルーム入室義務期間中に外部と通信してはいけない、ということをわかったうえで騎手になったはずだ。多くのファンは、週末不自由な思いをしても、それに見合うだけの金をもらっているんだから我慢するのは当然だろう、と思っている。 「違反者が多発するのはルールがおかしいからだ」という理屈は、そもそも理屈になっていないし、理解を得られない。通信事情が日進月歩の時代に逆行する運用体制がいつまでつづくかわからないが、一定期間違反者が出なければ、また時代に合わせていくための議論がなされるだろう。JRAは調整ルームのない海外のレースの馬券を売るようになっており、地方交流レースに乗るJRAの騎手は当日の調整ルーム入りとなっているので、いずれそれらとの整合性を取ることも考えているはずだ。 競馬は国民的レジャーである。ファンが安心してお金を遣って遊べる競馬であってほしい。
(「沸騰! 日本サラブ列島」島田明宏 = 文)
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