セブン&アイが期待する「SIPストア」は、「まいばすけっと」に勝てるか? 1号店で見た“残念な光景”
グループ内のチェーンとのコラボも、足かせに?
SIPストアでは試行錯誤している様子が随所にみられた。具体的には、雑貨チェーンのロフトがセレクトした商品や、「アカチャンホンポセレクション」など、グループ内チェーンとのコラボコーナーが挙げられる。 ロフトがセレクトした商品では、化粧水やアイライナーなどの化粧品を陳列。女性客を取り込む狙いがあったのだろう。常盤平駅周辺にコスメ関連の店舗が少ないことを出店のきっかけとしているものの、今後展開していく上では、特に薬局の多い地域などで効果が薄れてしまうと感じた。 離乳食などベビー用品のアカチャンホンポセレクションは、近隣の子育て世帯にとって有意義ではあるが、少子高齢化時代ではビジネスとして大きく成功する可能性は低い。化粧品と同様、薬局も競合となるため、現状のSIPストアをそのまま全国展開するのは難しいと考えられる。 ちなみにSIPストアの2階には、22席のイートインスペースと赤ちゃん休憩室(授乳室)、子どもが遊べるキッズルームがあった。しかし日曜の昼にもかかわらず利用者は筆者のほか男性客1人だけで、利用者が少ない印象を受けた。 ファミマで無印良品の商品を取り扱った施策が失敗しているように、そもそもコンビニと他企業のコラボは効果が薄い。コンビニにおけるメインの商材は、あくまでも食品とたばこであり、売り上げの1割しかない非食品に力を入れたところで、全体への影響は小さいと考えられる(セブンは既存店でダイソーとのコラボを強化している)。
類似コンセプト「まいばすけっと」との違い
あくまでもテスト店舗と位置付けるSIPストアが1号店から増えないのは、やはり競合が多いためだろう。日販は100万円を超え、女性客比率も既存店の4割台から65%に上昇したとしているが、他の地域に出店できるかは疑問だ。前述の通り、化粧品・ベビー用品で集客する手段は薬局が競合となり得る。向かい側のオーケーに客を取られているように、食品スーパーには品ぞろえと価格で劣る。 似たような業態に、イオングループの「まいばすけっと」がある。首都圏を中心に1000店舗以上を展開し、コンビニとスーパーを合わせた機能を持つ。一部店舗ではたばこを販売し、ATMも設置している。 まいばすけっとは何より価格が競合と遜色ない点が特徴だ。生鮮は一般的なスーパーとそう変わらないが、150円以下のペットボトル飲料を多くそろえ、600円以下で量も十分な弁当を販売している。生鮮を買う客とコンビニと同じように飲料や軽食だけを買う客の2パターンで利用されており、コンビニとスーパーの両機能をうまく合わせた店舗になっている。 まいばすけっとは住宅街の隠れた場所やオフィス街など、食品スーパーの“過疎地”に出店し、競合を避けることに成功している。SIPストアのように駅前至近の場所に出店する例は少ない。同店舗が既に都内を押さえている以上、SIPストアが都内で攻勢をかけるのは難しいだろう。 最近では“上げ底弁当”や“パッケージ詐欺”が話題になるなど、セブンに対する風当たりは強い。競合の多い他業態に進出する前に、既存店の商品を見直すべきではないだろうか。
著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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