家督を継いだ80代大地主、“兄から訴訟”の過去で「争族はもう嫌だ!」…自身の相続先に大葛藤も〈甥〉を選んだワケ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
家族会議で過去の経緯を公開…甥から理解を得る
以下の赤枠のメンバー総勢9名(86歳の長女は高齢であり不参加)を集めて会議を設けた。そこに真田と里見も加わった。 冒頭、三田博から話を行った。過去の経緯やその当時の心境など関係者に伝えるべきであると考えていたことから話を始めた。 当初、本人としては継ぐつもりもなかったが父親からの強い要望もあり応じることとしたこと。父や母の相続時は、親族間での揉めごとの発生や、バランスを取ることに大変苦労したこと。 財産を減らさずに残すことは非常に困難であり、多くの協力を仰ぎながら計画的に承継していくことが重要であること。資産に関しては個人に帰属するものではなく、あくまでも一族の所有物であるという認識が必要であること。 今後長く承継していくためには一族全体の力を結集する必要があること、などを説明した。 その後、真田と里見から資産の現状、今後不動産を購入のうえ対策を進めていくことを説明した。購入する不動産については三男の所有する不動産(三男が父親から相続したもの)を博氏個人で購入することで対策をすることにした。 実は、三男家との個別面談時に、真田から提案をしたところ快く応じてくれていた。また、博氏にとっても、第三者から購入するよりも当初から関連の深い物件であることで安心感があった。当該対策で、現状では相続税の納税額は手元資金で支払い可能な水準と推測されることを説明した。 最後に博氏から重要な内容として以下の説明を行った。 ・長男家の長男(以下「次期後継者」)とは養子縁組を行い次の当主としての役割を担って欲しいこと ・息子については後継者がいないことから、そのサポートに回って欲しいこと ・養子縁組後遅滞なく資産管理会社の株式の99%を次期後継者に贈与(現状では株式評価「ゼロ」)すること ・残りの1%については属人的株式として博氏の議決権を増やし、経営について意見を言える状態としておくこと ・公正証書遺言を作成し、土地についても次期後継者へ承継させること ・大筋は上記のとおりであり、外的要因による変動があれば皆で協力のうえ適宜修正のうえ対応に当たっていくこと ・当面の間は、真田氏、里見氏を顧問として採用し、方向性にずれがないか検証を行ってもらうこと 叔父から次期後継者として指名され、正直驚きを隠せなかったが、叔父の一族を残すための決断には感銘を受けた。今後のことを考えると楽観的ではいられないが、次の代へバトンを渡すことに注力しようと覚悟を決めた。