家督を継いだ80代大地主、“兄から訴訟”の過去で「争族はもう嫌だ!」…自身の相続先に大葛藤も〈甥〉を選んだワケ【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】
不動産コンサルと税理士に相談
不動産コンサルタントの真田と税理士の里見は依頼者である三田博と面談を行った。真田らは依頼者から過去の経緯や所有している不動産、承継に対する思いなどを聴取した。依頼者の課題を整理すると以下のとおりである。 ・相続人が実質長男の1名であり相続税に不安を感じる ・もめる可能性は少ないものの、孫がいないため長男から先の承継に不安を感じる ・本人が82歳であり承継までの残り時間が少ないと感じている 真田らは不動産や借入のほか家族構成を詳細に聴取するとともに、三田家の所有不動産をすべて確認のうえ事務所に戻ることとした。
カギは「その先の継承」も意識すること
真田と里見は所有不動産の整理および借入についての整理を行った。 所有不動産を整理すると、課税資産は主に不動産で約10億円、相続税試算額は約4億円である。夫婦それぞれが同額程度有しており、1次2次で約9億円と試算された。ただし、昨今の周辺地区の不動産価格の上昇を勘案するとさらに高額となる可能性もある。 法人化は10年前から設立してスタートしており、この10年間の内部留保もあるが個人の手許資金と合わせても4億円程度足りないことが判明した。 不動産の購入を行いながら、納税額を抑制していく取組が必要である。しかし、納税額に目途をつけるだけでは不十分だ。その先の承継について、道筋をつけることが最大の課題であると感じた。
現状の三田家の家族構成
真田らは、依頼者訪問のうえ分析した結果を説明した。おおむね想像していたとおりであったようであり、納税の対策として不動産購入を柱とする検討を進めていくこととした。 また、真田から最も重要な提案として、長男一族の甥と姪、三男一家に個別に面談をさせて欲しいことを申し入れた。三田博は応諾のうえ、それぞれに連絡のうえアポイントを取ることとした。 まず、真田らは三男一族と面談を行った。三田家全般についての承継についての考え方や今後の意向について聴取した。面談には三男のほか子供2人にも同席をしてもらった。 次に、長男家の長男と面談を行った。長女は都合が悪く、面談ができなかった。三男家と同様に聴取を行ったが、一方で母親が昨年他界したとの情報も得た。 母親の意向もあり、親族は呼ばずに少人数で葬儀を終えたとのことであった。三田博氏は当該事実を知らなかったことから許可を得て共有することとした。 三田家21代目が三田博の代であり、その次の22代目が息子および甥や姪となる。長男は独身であるが、そのほかは結婚しており子供がいる。