日銀・黒田総裁会見12月20日(全文1)景気は緩やかに拡大
市場の先行きをどう見ているのか
朝日新聞:朝日新聞の【サイトウ 00:08:48】です、よろしくお願いします。あまり株価のことをこういう場で尋ねるのは適当ではないのかもしれないんですけど、今日たまたま日銀にとって最後のMPMの日に、アメリカも日本も今年一番株価が安くなったタイミングであります。マーケットとしてはやはり、先行きに大きなリスクがあることは敏感に感じ取っている結果ではないかと思うのですが、今のこの市場の懸念、総裁は同ご覧になっているのかお聞かせください。 黒田:確かに内外の金融市場が、米国の株価が大幅に下落した10月の前半以降、さまざまリスク、例えば米中間の貿易摩擦等ですね。そういったことから投資家のリスク回避姿勢が強まっているために、日本を含む内外の株式市場では現在もまだ若干振れの大きい展開が続いているというふうに見ております。もっとも、わが国にしてもあるいは欧米にしても、株価のベースとなる企業収益の見通しは総じてしっかりしているということもありますし、経済のファンダメンタルズにも大きな変化は見られておりませんし、そうした中で為替市場も比較的安定した動きを続けているということは言えると思います。 ただ、日本銀行としては、内外の金融市場の動向、株式市場も含めて、それがわが国の経済・物価に与える影響についてはやはり引き続き注意深く見ていきたいというふうに考えております。
今年1年で日本のデフレマインドはどう変化したか
テレビ東京:テレビ東京の【大江 00:10:39】と申します。よろしくお願いいたします。今年1年を振り返っていただきたいんですけれども、黒田総裁は日本のデフレマインドというのは思った以上に根強いものがあるということをおっしゃっていましたけれども、今年1年で日本のデフレマインド、どのように変化したと考えていらっしゃるでしょうか。まずは1問目、お願いいたします。 黒田:これがなかなか難しい問題でしてですね。いろんな指標で見ることはできると思うんですけれども、典型的に言いますと労働市場が非常に引き締まって、いろんな面で完全雇用と言われるような失業率も2%台前半というところまで来ているわけですけれども、そのわりには賃金の上昇がやや鈍いというようなこと。それから物価も最近の動きは若干、原油の動向に影響されているとは思いますけれども、生鮮食品、エネルギー価格を除いたもので見ても、ゼロ%の半ばぐらいのところでありまして、価格の動きもやや鈍いと。 そうした中で、ご承知のように予想物価上昇率も一時下がって、ぐっと上がってきたんですけども、このところだいたいフラットで、予想物価上昇率も加速するという状況にまだなっていないわけですね。こういう賃金、あるいは価格の決定行動、企業、家計へのですね。さらには予想物価上昇率というところを見ても、なかなか、98年から2013年まで15年デフレが続いたわけですけども、その下で生じた賃金や物価があまり上がらないっていうことを前提にしたような考え方っていうか、勘考というものはなかなか抜けきれていないということはいえるとは思うんですけど。 ただ、その中でもサービス業を中心にやはり賃金上がって、サービス業はどうしても労働集約的ですから、運輸とか外食なんかでやはり価格も上がってきてるということもありますし、最近の短観の販売価格DIも非常に久しぶりにですけども、20年ぶりぐらいかもしれませんがプラスの領域に入ってきてるということもありますので、少しずついわゆるデフレマインドというのも和らいできてるとは思うんですけども、まだそれを払拭するに至ってないということは事実だと思います。 ただ、これから今後展望すると、需給ギャップがプラスの状況が続く中で実際の物価上昇率の上昇、そしてそれを適合的期待で反映して予想物価上昇率も上がっていくということで、徐々に2%に向けて物価上昇率は上昇していくというふうに見ています。ただ、そのテンポはかつて考えていたよりもやや鈍いっていうことは事実であります。 テレビ東京:もう1点お願いします。先ほど世界のリスクについて、米中間の貿易摩擦ですとか保護主義には注意が必要だということをおっしゃっていましたけれども、ペーパーにはわが国の金融環境は極めて緩和した状態にあるとあります。もしもリスクが顕在化した場合に、日銀にはまだまだ打つ手というのは残されているんでしょうか。 黒田:それは先ほどもちょっと申し上げたとおり、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入したときに公表したとおりに、手段として短期政策金利の引き下げとか、あるいは長期金利操作目標の引き下げ、あるいは資産買い入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、いろんなものが考えられると思いますけども、現時点では先ほど申し上げたように中心的な世界経済の見通しはIMFなどが示しておりますとおり、依然として3%台の後半という、かなり高めの成長が見通されてるということでありますので、リスクが高まってることはIMFも含めてみんな認めているわけですし、そういったリスクに、特に海外からのリスクですね。 さまざまなリスクには十分注意していく必要があると思いますけども、現時点で何か中心的見通しが変わったとか、あるいは日本経済の先行きの見通しが変わってことはないと思います。ただ、注意していって必要になれば、さっき申し上げたような緩和の手段はまだまだあるというふうに考えております。どうぞ。