日銀・黒田総裁会見12月20日(全文1)景気は緩やかに拡大
米中対立や原油価格下落の影響は?
共同通信:それでは幹事社より2点お伺いします。まず1点目ですが、世界経済について米中両国の対立激化、あるいは原油価格の下落など世界経済の下振れを示唆する動きが相次いでいるんですけれども、日銀が目指している2%の物価上昇のモメンタムに影響はないのか、総裁のご見解をお聞かせください。 黒田:日本銀行としては、わが国経済の見通しについては、確かに海外経済の動向を中心に下振れリスクのほうが大きいと判断しております。特に米中間の貿易摩擦をはじめとする保護主義的な動きの帰趨には注意が必要であると思います。この先、仮に貿易摩擦が長期化するようなことがあれば、この問題は内外経済に広く影響を及ぼす可能性もあります。最もIMFの見通しによれば、世界経済は足元、幾分、下方修正されたとはいえ、2019年に掛けて3%台後半の高めの成長が続くと予想されております。 また、先日の短観の結果やこの間の企業ヒアリングなどによりますと、わが国についてもこれまでのところ貿易摩擦の影響は限定的なものにとどまっていると考えております。こうした点を踏まえますと、さまざまなリスクに注意を払う必要はありますけれども、現時点ではわが国の景気が先行き緩やかな拡大を続けるという中心的な見通しに変化はないと思います。物価面でもマクロ的な需給ギャップがプラスの状況が続く下で、引き続き物価安定の目標の実現に向けたモメンタムは維持されておりまして、消費者物価の前年比は2%に向けて徐々に上昇率を高めていくというふうに考えております。 共同通信:それでは2点目です。ECBが量的緩和の年内終了を決めて、一方でFRBは来年の売り上げペースが鈍化すると見られています。こうした中で日銀は世界経済が悪化した際の政策の余地が乏しいのではないかとよく指摘されますけれども、総裁のご見解をお聞かせください。 黒田:各国の金融政策というものは、あくまでもその国の経済・物価の安定を実現することを目的として行われておりますから、経済・物価情勢が異なりますと各国の金融政策の内容、あるいは方向性に差が出るというのはある意味で当然だと思います。その上で申し上げますと、将来、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するために必要と判断されれば、もちろん適時適切に追加緩和を検討していくということになると思います。その際には、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の導入時に公表したとおり、緩和の手段として短期政策金利の引き下げ、長期金利目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速などのさまざまな対応が考えられますけれども、それはいずれにせよそうした事態になったときに適切に判断して行うということになると思います。 共同通信:幹事社からは以上です。各社お願いいたします。 黒田:はい、どうぞ。