バス業界を変革するカギは「スペシャリストの採用」だ! 昔ながらの“何でも屋”育成システムは、もはや時代遅れである
専門知識でバス業界を革新
現在のバス業界は、2024年問題を背景に、運行の労務管理や安全性の向上において、専門家による制度設計や規制順守が欠かせなくなっている。 また、 ・エネルギー問題への対応 ・ゼロカーボンの推進 に関しても、環境問題を無視することはできない。環境への配慮が求められる現代において、バスの運行を環境的に持続可能な方法へとシフトするための専門的な知識が必要である。 さらに、福祉の観点からは、バリアフリーやユニバーサルデザインを考慮した運行方法や、高齢者や障がい者に対するサービスの向上が求められている。これらの課題に対応するためには、業界が各分野の専門職を積極的に採用し、ジェネラリスト中心の採用慣行を見直すことが重要だ。 専門職を採用すれば、外部の専門家と連携する必要が減り、問題解決が迅速に進むと考えられる。
筆者の意見への反対意見
もちろん、筆者の意見には反対意見も多く聞かれる。一部の業界関係者は、専門職を採用するには高い給与が必要となり、それが 「コスト面での負担」 になると懸念している。そのため、限られた人材のなかでは、ジェネラリストの方が採用しやすいという意見が根強い。ジェネラリストならではの 「柔軟性」 が失われるのではないかという懸念もある。また、バス業界は「現場主義」が根強く、実務経験を重視する傾向があるため、現場での経験がない専門知識を持った人材が採用されても、実際の運営に役立つかどうか疑問視する声もある。 「理論と現場のギャップ」 を懸念する声もある。さらに、専門職の採用が進むことで、 「業界の閉鎖的な体質」 が強化され、外部の新しいアイデアや技術を導入することがかえって難しくなるのではないかという懸念もある。
ジェネラリスト偏重からの脱却
反対意見にも一理はある。 しかし、バス業界は多様な問題を迅速に解決する必要があり、専門職を採用することは業界にとって 「即効性」 があり、万能な解決策になる可能性があるのではないか。 その可能性を最初から排除するのは、果たしてよいことだろうか。確かに、専門知識を持つ人材が現場の実務にどう適応するかという懸念は理解できるが、その可能性を完全に否定することには賛成できない。 例えば、近年では大学教員がクロスアポイントメント制度(大学の教員が学外の企業や政府機関などで専門職としても活動する制度)を通じて、提携企業で専門職を務め、その結果、高い評価を得ることも増えてきている。こうした大学と地域の連携を活用することもひとつの手段だ。 筆者は、専門職を採用することで ・現場での経験 ・専門知識 を融合させ、解決策を見いだせると考えている。例えば、専門職を採用する際には、まず現場で経験を積んだ後、その知識を実務に生かす方法を模索するというアプローチも可能だ。 コスト面については、専門職を導入することで、長期的には効率的な運営や法的リスクの回避、そして社会的信頼の向上につながり、最終的にはプラスになる。つまり、専門職の採用と現場主義を両立させることで、バス業界は新たな時代に向けた変革を実現できる可能性があるのだ。 ジェネラリスト中心の採用慣行を見直し、専門性の高い多様な人材を迎え入れることで、業界全体の強化とより効率的で持続可能な運営ができると信じている。 とにかく、その“可能性”を排除してはいけない。
西山敏樹(都市工学者)