台北で中国問題の国際会議:菅野志桜里氏リポート
総会参加議員に対する中国の圧力
このようなIPAC総会の盛り上がりに対して、中国政府は露骨に敵対姿勢を示してきた。 そもそもIPACは、香港の民主派メディア創業者ジミー・ライ氏の裁判を通じて中国当局から不当な法的制裁を受けている。すなわち、事務局長のルーク・ド・プロフォード氏(英国)と私は、中国政府の転覆を試みたとしてジミー・ライ氏の「共犯者」に名指しされている。私はジミー氏本人と接点を持ったことすらない。また国会議員当時の言論・政治活動について、他国が一方的に犯罪と主張するのは、日本に対する主権侵害である。このため、IPACとしても、裁判における証言・証拠提供を惜しまないと香港の捜査当局に伝えているが、一向に返事はない。「共犯者」への事情聴取なしに進む裁判が、政治的動機に基づいた茶番劇であることは明らかである。 こうした状況からも予想していた通り、IPAC台北総会は、中国政府からの執拗な干渉・圧力を受けた。まず開催前に、ボリビア、コロンビア、ボスニア、スロバキア、北マケドニア、そしてアジアのもう1カ国、少なくとも6カ国の議員が、メールや電話でIPAC参加をとりやめるよう干渉を受けた。なかには、台湾に行かず中国に来るよう招待を受けた例もある。議員のみならず関係者にもこうした干渉圧力が加えられた。 7月30日には、中国外務省の林剣副報道局長が記者会見で「会議に信頼性はない。関係する議員には、台湾問題を利用した中国への内政干渉をやめるよう忠告する」と語った。 さらに開催直後には、ルーマニアから参加したカタリン・テニータ議員の所属政党に対し、在ルーマニア中国大使館からレターが届いた。「台湾と一切の公式接触を行わないよう所属議員を管理し措置せよ」という趣旨のこのレターこそが、まさに内政干渉そのものというべきだろう。また、参加議員のなかには、中国政府からの圧力を受けた自国政府から、陰に陽に圧力を受けている議員も複数存在する。IPACは8月6日、所属議員が中国政府の不当な圧力を受けたとして抗議声明を出した。 日本はIPACのスターティングメンバ―であり、その存在感は大きい。今回参加したのは、自民党から中谷氏、大岡敏孝氏、本田太郎氏、滝波宏文氏の4人。立憲民主党から桜井周氏。日本維新の会から音喜多駿氏、岩谷良平氏、阿部司氏の3人。そして国民民主党からは共同議長の舟山氏だ。