盲目のピアニスト・辻井伸之 世界最古のレーベルと専属契約「彼にしか見えていない世界がある」
ドラァグクイーンのサマンサ・アナンサとインスタグラマーのウラリエが、金曜日にパーソナリティーを務める番組『Clip』(ラジオ関西、月-金午後1時~)に、同時通訳者の田中慶子さんがゲスト出演。以前、同時通訳を務めたことがあるという、盲目のピアニスト・辻井伸之の魅力を語った。 【写真】辻井伸之さん グラモフォンとの専属契約発表会見の様子 同時通訳者は「辻井さんのスゴさを実感した」 2024年、辻井さんは世界最古のレコードレーベルであるドイツ・グラモフォンと専属契約。田中さんは、同年4月に行われた発表記者会見での通訳を担当した。 ドイツ・グラモフォンはクラシックの名門で、世界的指揮者・小澤征爾さんなども所属していたが、日本のピアニストが専属契約を交わすのは辻井さんが初めて。会見時の辻井さんの様子については、「『本当にうれしいです』と、ものすごくうれしそうにされていたのが印象的だった」と振り返った。 会見には、ドイツ・グラモフォンの社長も来日し参加しており、「辻井さんは生まれつき目が見えないが、だからこそ、辻井さんにしか見えていない世界があるんだと思う。だからあの音色が出るんだ」とコメント。さらに、「いろいろなアーティストを見てきたけど、こんな表現ができるアーティストは唯一無二だ」と評したという。 その様子を間近に見ていた田中さんは、「あらゆるトップアーティストを見てきた人がおっしゃっていたので、(辻井さんの)すごさを改めて痛感した」と語った。 記者会見では、辻井さんが実際にピアノ演奏を行うシーンもみられた。田中さんは、「ピアノって、こんなに優しい音が出るんだと驚いた」そうで、「(辻井さんは)演奏が進むにつれて、ものすごく情熱的なパッションにあふれた演奏をされる方で、『なんて素晴らしいんだろう』と感じた」と興奮気味に話していた。 田中さんは、同年12月に東京・紀尾井ホールで行われた辻井さんのコンサートに足を運んだそうで、そこでも感動しきりだったという。 演奏中にピアノの弦が切れるというハプニングが起こった際、辻井さんは「このまま演奏を続けるわけにはいかない」と一旦、演奏を中断。その様子を「立ち振る舞いがあわてることもなく自然で、しかもベストな演奏を届けることをなにより大切にしていることに感銘を受けた」と語る田中さんに対し、ウラリエは「自分やったらアワアワしちゃいます」と感嘆の声をもらした。 その後、調律師が登場し、観客が見守るなか数分で弦を直したそうで、その仕事ぶりに観客からは思わず拍手が巻き起こったのだとか。このエピソードに、サマンサは「調律師さんって常駐しているんですね」と驚いていた。 辻井さんの演奏について、「ピアノと辻井さんが、ひとつの生き物みたいに見えるほどだった」と表現した田中さん。さらに、「言葉を越えた表現方法がある方はうらやましい。演奏を通じて、魂に栄養をいただいた感じがした」と振り返った。 サマンサも、「言葉以外のツールでコミュニケーションをとったり、誰かに何かを伝えるというのは素敵なこと」と共感していた。 (取材・文=バンク北川 / 放送作家) ※ラジオ関西『Clip金曜日』より
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