「常に多くの犯罪と銃、社会不安に直面していた」安住の地求めて世界を巡り辿り着いた『日本のふるさと・遠野』アメリカ人タブラ奏者の選択とは?
■4月、岩手県遠野市に地域おこし協力隊の一員としてアメリカ人のタイ・バーホーさんが着任しました。バーホーさんはインドの伝統的な打楽器「タブラ」の世界的奏者でもあります。なぜ遠野に移住し、ここを安住の地としたのか?背景には現代のアメリカ社会を覆う不安がありました。 【写真を見る】「常に多くの犯罪と銃、社会不安に直面していた」安住の地求めて世界を巡り辿り着いた『日本のふるさと・遠野』アメリカ人タブラ奏者の選択とは? 16日、遠野市民センターで市民向けに国際理解講座が開かれました。 講師に招かれたのは4月から地域おこし協力隊員として活動するアメリカ出身のタイ・バーホーさん(60)です。 バーホーさんは妻と子ども2人を連れて遠野に移住し、現在、遠野の土地や人々、コミュニティーについて学びながら、職人や伝統をつなぐ人々の活動とインタビューをドキュメンタリーにして、動画投稿サイトなどを通じて世界に紹介しています。 バーホーさんはインドの伝統的な打楽器「タブラ」の演奏者という、もうひとつの顔を持っています。 タブラは2つの太鼓を指や手のひらを使ってさまざまな音を出しながら演奏する楽器で、「世界一難しい打楽器」と称されています。 インドの巨匠ザキール・フセイン氏に師事し、インド伝統音楽の枠を飛び出してロックやジャズといった音楽ともコラボレーションし、スティング、スティーリー・ダンといった世界的なアーティストとも共演するなど、これまで25年間にわたって世界各国を周って演奏してきました。 (タイ・バーホーさん) 「幼少期はもちろん音楽もそばにあったけど、自然が私の中の大きな世界を占めていました」 バーホーさんは1964年にマサチューセッツ州に生まれ、豊かな自然に囲まれた場所で育ちました。 十代の頃にアメリカ先住民の人々の自然とともに生きる生き方に強く共感し、共に暮らしながらさまざまな知恵を授かり、彼らの精神世界を探求しました。 その後、大学で脳科学や心理学を学ぶ日々の中で出会ったのが、アジアやアフリカの打楽器でした。 とりわけ、バーホーさんの心を捉えたのがインドの伝統的な打楽器「タブラ」でした。 バーホーさんは60歳になるのを機に世界中を飛び回る生活にひと区切りをつけて、自分と家族の居場所を探すことにしました。その背景にあったのは、アメリカが抱える社会不安の問題でした。 (タイ・バーホーさん) 「アメリカで暮らすことも考えて、故郷のマサチューセッツやコロラドなどを訪れました。アメリカには素晴らしい人々もたくさんいますが、私たちは常に多くの犯罪や銃、暴力的な人々の言動そして社会に漂う不幸感に直面していました。子どもたちが健やかに成長するため、優しく安全な場所を求めてアメリカ国外を探し始めたのです」 カナダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダなど数々の国で居場所を探し求め、日本を訪れたのは1年半前のことです。 日本人の妻の育美さんとふたりの子どもを連れて、群馬県から北海道に向けて車で家族旅行をする途中に偶然立ち寄ったのが遠野でした。