年末ボクシング7大世界戦。名勝負になりそうなカードはどれ?
確かに前回、米国進出計画が頓挫した中で、暫定王者との試合を迎えた内山には、集中力や緊張感が欠けて見えたし、一度、ダウンした後に焦ってしまったため、みすみす逆転のチャンスも放棄してしまっていた。 この日、調印式を終えた内山に、「前回の試合は、集中力が欠けてカウンターを許したように見えたけど、その反省をどう生かすのか?」と質問した。 「考えていなかったスピードで、ガードの隙をつかれた。避けているはずの反応で避けることができず、普通なら当たっているはずのパンチが当たらずカウンターを受けた。そのあたりを注意して練習を積んできた」 また「どんな出方をしてくるのか様子を見るけれど、いろんなパターンを想定して準備をしている」と、コラレスがボクシングを変えてきても対応策は練ってあるという。 37歳となったが、フィジカル面は新宿にある土居トレーナーのジムで鍛えあげた。相手の内側に入ることを意識、スタンスを広くした場合にも、軸をぶらさずにカウンターに対応できるようにと、下半身強化にテーマを絞った。両足を前後に広げて負荷をかけて踏み込む「ランジ」と呼ばれる種類のトレーニングを何通りもメニューに組み込み、太ももの前部にある大腿四頭筋が浮き出るほどになっている。 前日、テレ東の人気女子アナにちょっかいをかけていたコラレスは、この日も会見中に、また笑顔でそのアナに目線で合図を送るなど、ラテン系特有の舐めたような態度をしていた。もちろん、リングに上がれば豹変するだろうが、負けを知り、モチベーションを極限まで高めた37歳の内山が、どんなボクシングを見せてくれるのか楽しみである。 内山の試合に続いて、面白くなりそうなのが、大晦日に岐阜で行われる田中恒成の王座決定戦だ。 スピードとパンチのキレが優れたスタイリッシュなボクシングで、昨年5月にプロ5戦目の日本最速でWBO世界ミニマム級王者となったが、減量に苦しんでいた田中は、一度防衛しただけでベルトを返上。7勝(4KO)無敗のまま8戦目で2階級目のベルトを狙う。 だが、相手のモイセス・フェンテス(31、メキシコ)は、27戦24勝(13KO)2敗1分のキャリアを持つ元2階級王者。息をつく暇がないほど超好戦的なボクシングを仕掛けてくる。 当日、解説予定の飯田氏も、「フェンテスはパンチがあって簡単な相手じゃない。ただ重要なのは、恒成がどう戦うか。受けに回って打たせると、フェンテスはどんどんと前に出てきてエンジンがかかる。いかにそういう時間を作らずに、逆に攻め続けて恒成がペースを保つことができるかだろう。それさえできれば試合の後半でKOシーンが見れるのではないか」と、展開を予想する。 7大世界戦が終わったときに日本人世界王者は何人誕生しているのか。どのカードが最も視聴率を稼ぎだすのか。試合の評価、価値観はそれぞれで、視聴率の高い試合が必ずしも名勝負だとは言えないが、年末の7大世界戦が、2017年の日本のボクシング界の行方を占うことになるのは間違いない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)