相乗りタクシー実証実験始まる 名古屋は民間主導で独自に実施、狙いは?
料金メーターは不使用、事前表示の料金で乗車可能
実験対象エリアは、名古屋市東部の東、昭和、瑞穂、千種、天白、名東の計6区を含む約12キロ四方。対象車両の助手席の前には「乗合」と書かれたプレートが掲げられ、側面には1から30までの番号プレートが貼られている。 乗客が行う手順は、事前登録した専用サイトで、乗車地点と降車地点を地図上で選択。さらに最大2人までの乗車人数、乗車希望時間を入力すると、確認画面に進み、利用料金が表示される。試しに筆者が愛知県庁(中区)から同市瑞穂公園陸上競技場(瑞穂区)までの約10キロ区間の乗車希望を入力すると、利用料金は、「相乗りなし」で3800円、「相乗り」になった場合は2200円になっていた。 内容確認の後に「確定」を押すと、配車センターへ予約情報が届き、迎えに来る車両のプレート番号が案内される。スマートフォンを持っていない人でも、配車センターへの電話予約で、「相乗り希望」と伝えれば利用可能。通常の料金メーターは不使用のため、事前表示の「乗合あり」または「乗合なし」利用料金を支払えばOKとなる。
AIシステム提供会社、将来は「オンデマンドバス」応用も視野に
一方、運転手側に必要な主な装備は、通信SIM入りのタブレット端末のみ。内蔵GPSで現在位置を常にAIシステムに伝える。配車予約が入ると「向かう乗車位置」と「乗車人数」の情報が表示される。道順はシステムから指示をせず、運転手に任されている。タブレット操作に慣れていない運転手もいるため、操作は簡略化されている。 実験でデータを収集中のため、日別利用客数などは今のところ非公開。未来シェアの松舘渉代表取締役は「システムの基本は、車両位置と乗客の数を常に把握して、多くの乗客を効率的に送り届けること。将来的には、運行時間と道順が決まっている路線バスではなく、乗客が乗りたい時間に、タクシーのように乗れるオンデマンドバスにも応用できる」と展望を話した。 実験に参加するつばめグループの担当者は「うまく相乗りができた場合、乗車料金が割安になる点は、乗客にとって大きなメリットのはず。多くの人にタクシーを利用いただくきっかけになるか、実験結果を分析したい」と話した。 後日、相乗り利用者には、メールなどでアンケートに答えてもらい、利便性や問題点などの声を集める。結果は3月中にまとまる見通し。 実験結果は、実験に許可を出した国土交通省中部運輸局に提出される。一定の効果が見られた場合、相乗りタクシーの運行許可など、新しいタクシー運行の形が生まれる可能性があるが、現段階では不透明。相乗りタクシーのサービスが、タクシー業界生き残り策の一つとなるのか、今後の行方が注目される。 実証実験は午前8時半から午後4時半の時間帯で3月5日まで実施される。 (斉藤理/MOTIVA)