菅首相が掲げる「脱炭素社会の実現」 カギとなる洋上風力発電は、日本で広まるのか
再生エネルギーの切り札
今、洋上の風力発電に大きな注目が集まっている。重要な国家プロジェクトとして進められているからだ。 首相就任直後の昨年10月の臨時国会で、菅義偉首相は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。カーボンニュートラルとは二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロのこと。実現のためには、二酸化炭素排出量の多い石炭火力発電所を休廃止し、再生可能エネルギーを普及させることが必須。その再エネの切り札として期待されるのが洋上風力発電だ。
資源エネルギー庁・新エネルギー課の山本慎一郎課長補佐は、洋上の風力発電は陸上に比べ、次のような優位性があると語る。 「一般に陸よりも海、それも沖合に出るほど風が強い。遮るものもないので安定した風を受けることができて効率もいい。また洋上であれば大型化して発電効率を上げることもできます。海では立地制約が少ないので大量導入も期待できる」 日本国内の海域で、洋上風力を最大でどの程度導入できる可能性があるのか(導入ポテンシャル)。環境省は最大14億1276万kWとする試算を2015年に出している。単純計算で、国内の年間電力需要をすべて賄うことができる莫大なものだ。あくまで理論値にすぎないが、電力の主力になる可能性を感じさせる。 洋上風力は欧州ではすでに本格普及している。世界最大の洋上ウィンドファーム(集合型風力発電所)があるイギリス東部のホーンジーでは、沖合120キロの位置に174本もの風車が立ち並び、発電容量は1時間あたり120万kW(1.2GW)という巨大なスケールだ。この発電容量は現在再稼働している大飯原発4号機(1.18GW)に近い。
こうした先進国に比べると、日本はまだ一歩目の段階だが、日本にも10年以上前から洋上風力発電に取り組んだ企業がある。茨城県を本拠とする風力発電企業「ウィンド・パワー・グループ」だ。