熱狂的信者の多いロータリーエンジン! マツダしかクルマに採用していないけど実際「何がいい」?
小さくてもパワフル!
たとえば単気筒レシプロエンジンであれば、4サイクルということはクランクシャフトが2回転する(ピストンが2往復する)ごとに1回の燃焼が起きる。 一方、ロータリーエンジンでは、上記で示したようにひとつのローターにおいて同時に異なるサイクルが実行されている。1ローターの各辺がどのような行程にあるのかを簡単な表にしてまとめてみよう。 横列に並んだ行程は、各辺において同時に行われている。すなわち、4つのサイクルにわけたとき、そのうち3つの行程では、どこかの辺で燃焼が起きていることになる。 エンジンというのは燃焼による膨張圧力を回転力に変換するという仕組みなので、単純にレシプロエンジンと比べて燃焼回数が稼げる仕組みであるロータリーエンジンは、同じ排気量であれば高出力が狙えるといえるのだ。 ただし、ここまでの内容からわかるように、1ローターと単気筒エンジンはそもそも同じ土俵で比べてはいけないものだ。そのため、排気量をもとにした日本の自動車税制において、ロータリーエンジンはレシプロエンジンの1.5倍に換算するという「みなし規定」が条例によって定められている。つまり、ロータリーエンジンにおける1ローターは、レシプロエンジン1.5ピストンに相当すると税制上はなっているのだ。 そして、実際の動きからすると、1ローター=3気筒と捉えるとわかりやすい。今回、MX-30 Rotary-EVにて復活した「8C」型ロータリーエンジンは1ロータータイプだが、過去にRX-8やRX-7に搭載されていた「13B」型ロータリーエンジンは2ロータータイプであり、6気筒エンジンに相当するという見方もできる。実際に13Bエンジンを見たことがあれば、4気筒のレシプロエンジンよりも圧倒的にコンパクトなサイズに驚かされる。 すなわち、前述したように高出力とコンパクトを両立できるのがロータリーエンジンのメリットなのである。 また、ロータリーエンジンはハウジングのポート(通路)を用いて吸気や排気を行う仕組みとなっている。つまり、バルブなどの可動パーツが不要となる。それはメカニカルノイズを発生させないというアドバンテージにもつながる。 ピストンを往復運動させるレシプロエンジンでは上死点・下死点でそれぞれ動く向きを変えるために、位置によってピストンにかかる慣性力が異なる。そのため、クランクシャフト1回転につき2度のトルク変動が起きてしまう。しかし、ローターを偏心運動させているロータリーエンジンでは、構造上トルク変動を生まないというのもメリットだ。 いずれにしても、「モーターのように」と形容される、ロータリーエンジン特有の滑らかな回転フィールにつながってくる。もっとも、MX-30 Rotary-EVがそうであるように、モーターで駆動する電動車が増えてきている昨今では、この部分はロータリーエンジンのアドバンテージといえなくなっているかもしれない。 そして、ロータリーエンジン特有のウィークポイントとなっているのが熱効率の悪さだ。 ハウジングのなかでローターを回転させるという構造から、ロータリーエンジンの燃焼室はどうしても偏平な形状となってしまう。これは壁面からの冷却損失が大きいということにつながる。いい換えれば、燃焼によって発生した熱エネルギーが、エンジンの金属部などを通して捨てられてしまう分が多くなってしまう傾向にある。そのほか、ロータリーエンジンは燃焼室が大きいことにより、点火による主燃焼とスキッシュ流によるものの2段燃焼になってしまうという構造的な問題もある。 マツダは新しい「8C」型ロータリーエンジンにおいて、こうした課題を解決しているという。それにより、従来の13B型エンジンと低出力領域で比較すると、20~25%ほどの燃費改善を実現したという。 ただ、そうだとしても、MX-30 Rotary-EVのハイブリッド燃費性能が15.4km/Lでしかないのだから、効率面では現代のよくできたレシプロエンジンとは勝負にならないというのが、現時点でのフラットな目線での評価となるだろう。
山本晋也