世界で頻発するテロ事件 日本は本当に安全なのか?
これは、かつてアルカイダが使った手口で、テロを起こす数年前から工作員を標的国に送り込み、まず現地になじませ、現地で仕事を持ち、その間に標的を定め、その偵察を行い、テロに必要な物資、武器等を調達するという用意周到な作戦でした。1998年8月にケニアとタンザニアの米国大使館がほぼ同時に爆破された事件では、テロリストは4年も前から現地に入り込み、漁師を装ってテロの準備を行っていました。さらに、あの9.11米同時多発テロでも、テロリストは少なくとも実行の1年以上前に米国本土に入り、航空学校で旅客機の操縦を習っていたことなどが知られています。 このように、テロリストは、一度公言したことは時間をかけても最後までやり通すという執念を持ってテロに臨む傾向があります。したがって、これらの過去の事件などを教訓にし、テロリストがどんな手口を使ってこようとも、後手後手になるのではなく、テロリストの計画を先取りし、テロを未然に防ぐべく対策を講じる必要があると思います。
------------------------------------ ■安部川元伸(あべかわ・もとのぶ) 神奈川県出身。75年上智大学卒業後、76年に公安調査庁に入庁。本庁勤務時代は、主に国際渉外業務と国際テロを担当し、9.11米国同時多発テロ、北海道洞爺湖サミットの情報収集・分析業務で陣頭指揮を執った。07年から国際調査企画官、公安調査管理官、調査第二部第二課長、東北公安調査局長を歴任し、13年3月定年退職。著書「国際テロリズム101問」(立花書房)、同改訂、同第二版、「国際テロリズムハンドブック」(立花書房)