世界で頻発するテロ事件 日本は本当に安全なのか?
日本への危険を思い起こさせた仏のトラック・テロ
最近の事件では、私は7月14日のフランス革命記念日にニースで起きたテロを注目しています。トラックを暴走させて花火の見物客をはね飛ばし、少なくとも84人が死亡し、202人の負傷者が出たという事件でした。トラックというどこにでもある物を武器にし、大量殺戮を行ったということで、これなら日本でも簡単にテロを起こすことができると思ったからです。 これまでは、テロといえば爆弾や銃によるものが主体でしたが、これまで「イスラム国」が言ってきたように、「身の回りの物すべてを武器にし、西欧人を殺せ」という指示が現実のものになったのです。私は2008年6月に東京・秋葉原で起きた「秋葉原通り魔事件」を思い出し、背筋がぞっとしました。“この手を使えば日本でも簡単にテロを起こすことができてしまう”と。 いまのところ、日本では、イスラム過激派のテロリストが大挙入り込んだという話は聞いていません。また、「イスラム国」の宣伝活動に感化されて、シリアやイラクの紛争地に入り込み、帰還したという日本人も話題になっていません。欧州、アフリカ、アジアなどは、シリアやイラクに渡ったいわゆる「外国人戦士」が次々に帰国し、母国でテロを起こそうと機会をうかがっていると言われていますが、日本の場合は、まだそこまではいっていないようです。しかし、「イスラム国」が日本を直接の標的にすると宣言している以上、テロリストは何らかの方法を考えてテロを実行してくると思われます。
日本を攻撃するためのテロリストの手口は?
さて、彼らはどんな手を使って日本でテロを成功させようとするのでしょうか? かつて、アルカイダの幹部が「日本への攻撃を計画したが、どうしてもうまくいかなかった」と証言しています。その理由は、日本にはアルカイダを支援し、テロリストに便宜を提供してくれる仲間、あるいは協力者がいなかったからということでした。 そうであるならば、彼らが本気で日本をテロ攻撃するためには、テロを手引きするような協力者の開拓に力を注ぐ可能性があります。最も手っ取り早く、資金もかからないのが、いま「イスラム国」が得意としているソーシャル・メディア(SNS)を使って、日本人の若者をリクルートし、仲間に引き込むことでしょう。テロリストは、世界の様々なニュースを見て、この国にはテロのインフラが築けそうだと感じたら、その国に合う内容のメッセージを流し、標的国の若者を取り込むよう仕掛けるでしょう。日本の場合は、その目安となるものは、社会に対する不満、憎しみ、恨みのようなものと考えられ、こうした若者の心の隙間にそっと入り込み、自分たちが最高の理解者であると印象付けます。 極めて単純な手法に見えますが、過去の事例を見ると、多くの若者が、モスク、学校、地域コミュニティ、あるいは刑務所内でテロリストに一本釣りされ、彼らの仲間に入っているのです。最近では、警察や治安機関の目が厳しくなっているため、リクルートについては、SNSで呼び掛けるというケースが最も大きな成果を上げているようです。 もうひとつ考えられることは、例えば、テロの目標を数年後に据えて、少しずつ秘密裏に準備を進めるというやり方です。その意味では、2020年に開催される東京五輪・パラリンピックを標的にテロの準備を進めることが考えられます。これを実行するため、今のうちから日本にスリーパー(潜伏工作員)を送り込むという作戦もあり得ます。