今後のトラック開発にも影響大!? ユーロNCAPによる史上初の大型トラック安全性評価「トラック・セーフ」プログラム(前編)
初回は長距離輸送と地場輸送を同時に評価
NCAPがなかなか大型トラックに拡大しなかったのは、用途の多様さも一因となっている。これは例えていうなら、「長距離輸送用のトラクタと、地場のごみ収集車を同じ基準で評価できるのか?」という問題である。 今回、長距離輸送と地場輸送を同時に評価したが、交差点など都市環境を想定した技術や設計を備えたトラックには「シティ・セーフ」認定が与えられた。次回のアセスメントは長距離セグメントに焦点を当て2025年4月に発表される予定で、その後、都市配送セグメントの試験を実施し、2025年10月に結果を発表する予定となっている。 評価された9モデルのうち、5つ星が2台、4つ星が2台、3つ星が4台、1つ星が1台で、シティ・セーフ認定は4台だった。 史上初のトラック・セーフ評価プログラムでボルボ・トラックスの2モデルが最高評価となる5つ星を獲得したいっぽう、もっとも評価が低かったのはイヴェコ「S-Way」で1つ星だった。
関係者のコメント
ユーロNCAPの関係者のコメントは次の通りで、乗用車がそうであったように、商用車でも評価プログラムがメーカーの開発方針に大きな影響を与えるようになると認識しているようだ。 「この試験結果は、現在のトラックがモデルによって安全性に大きな違いがあることを示唆しています。この違いがメーカーの戦略の違いに起因していることは注目に値します。すなわち今回の結果は、ユーロNCAPが大型トラックの安全性に大きな影響を与える前の『スナップショット』を提供しています。 大型車市場には、豊富な安全機能が用意されています。また、必ずしも高価なモデルだけに備わっているわけではありません。例えば4つ星を獲得したルノー・Tは市場では比較的安価な位置づけです。 『どの会社のトラックが最も安全なのか?』は重大な問題です。ユーロNCAPによる評価という動機付けがない段階から、ボルボが安全性を重視するトラック開発を行なっていたことを興味深く思います。この技術は欧州で毎年3000人が亡くなっている交通事故に対処するものです」。 (ユーロNCAPの戦略開発ディレクター、マシュー・エイブリー氏) 「トラック・セーフ評価プログラムの開始は、車両の安全性にとって画期的な瞬間です。私たちの商用車分野への取り組みの始まりであり、ビジョン・ゼロ達成にとっては不可欠のステップです。 最初の評価結果は、ユーザーがどのメーカーの安全性パフォーマンスが優れているか特定するのに役立つでしょう。今後はトラック対乗用車のパッシブセーフティに関しても2030年ごろを目途にプロトコルを追加します。 このプログラムは、メーカーにもっと安全なトラックを作ることを促すとともに、大型トラックの安全エコシステムに関係する全ての人を初めて団結させるものです。 トラックが安全になることで、関係者には様々な利益があります。交通当局は社会負担を減らし、経済成長を支援することができ、荷主は交通事故への批判からブランドを守ることができます。安全なトラックは、より収益性の高いトラックであるという事実は、企業のみならず欧州全体に利益をもたらします」。 (ユーロNCAPの事務総長、ミシェル・ファン・ラーティンゲン氏)