今後のトラック開発にも影響大!? ユーロNCAPによる史上初の大型トラック安全性評価「トラック・セーフ」プログラム(前編)
史上初めてNCAP(新車アセスメントプログラム)が大型トラックまで拡大し、欧州のユーロNCAPがその結果を公表した。 【画像ギャラリー】史上初の「トラック・セーフ」プログラムで高評価だったボルボグループの車両(3枚) NCAPによる安全性能評価は、乗用車ではメーカーの戦略にも影響を与えているが、今後はトラックの開発にも大きな影響を与えそうだ。 文/トラックマガジン「フルロード」編集部 写真/AB Volvo・Renault Trucks
大型トラックに拡大したNCAP初めての結果発表
自動車の安全性を、わかりやすく星の数(最高は5つ星)に換算して評価するNCAP(新車アセスメントプログラム)は米国で始まり、その後世界に広まった。中でも欧州のユーロNCAPは独立性の高さや知名度などで名高く、そこでの評価基準がメーカーの開発方針にも影響を与えるようになっている。 これまで乗用車が対象だったが、この度ユーロNCAPは史上初の大型トラック安全性評価「トラック・セーフ」プログラムを開始し、2024年11月20日にその結果を公表した。 大型車の関与する交通事故は深刻な結果をもたらすことから、「ビジョン・ゼロ」(交通事故による死者・重傷者をゼロにする)達成を使命とするユーロNCAPにとって、商用車への評価対象の拡大は不可欠となっている。2020年には小型商用車向けに同様の評価制度が導入されていた。 大型トラックは欧州の道路交通の3%に過ぎないが、交通事故死者数の15%を占め、そのうちの89%は相手方(乗用車、バンの乗員、交通弱者)が死亡している。 いっぽうで欧州の消費財の大部分は大型トラックによって運ばれており、経済活動の原動力となっている。その安全性能を客観的に測定し、関係者が最も安全なトラックを選択できるようにすることは、社会的コストの削減とともに商業的にも役立つとされる。 従ってトラック・セーフプログラムは、トラックメーカー、ドライバー、交通当局、運送業者、保険会社、荷主などの関係者を、共通かつ調和のとれたベストプラクティスに基づいて統合することを目的とする。 史上初の大型トラックのNCAPは3つの性能カテゴリー、つまり「安全運転」「衝突回避」「衝突後の救助(レスキュー)」で評価された。 試験プロトコルは安全運転に重点を置いた事故前の段階から、事故直前または事故発生時の衝突回避・被害軽減(アクティブ・セーフティ)、そして事故後のレスキューという3段階で、各ステージに対してパーセンテージでスコアが与えられる。これらを集計して総合評価が星の数で決定される。 今回のプログラムで評価されたのは、欧州7ブランドの9モデルだった。この9モデルは欧州を走っている物流用トラックの95%を占める。