<アグレッシブ・’21センバツ東海大甲府>第1部 軌跡/1 夏の大会、5年ぶり制覇 「打倒学院」合言葉に /山梨
◇攻めの野球、大舞台に挑む 「5年間出てなかったので先輩たちの分まで自分たちがプレーしなければならないと思う」。5年ぶり6回目のセンバツ出場が決まった1月29日、三浦諒太主将(2年)は神妙な面持ちで甲子園への意気込みを語った。 東海大甲府は今回を含め、甲子園に春夏合わせて19回出場の強豪だが、2016年のセンバツ以来、大舞台から遠ざかっていた。立ちはだかってきたのはライバル・山梨学院だ。同校は16年から4年連続で夏の甲子園に出場し、センバツも19、20年に2年連続で選出された。 その壁を打ち破ろうと、チームは「打倒学院」を合言葉に練習してきた。しかし、そこに昨春から新型コロナウイルスという新たな困難が加わった。自粛を余儀なくされた3月上旬から6月上旬まで全体練習はできず、再開後も練習時間に制約があった。大会開催も困難になり、センバツに続き、5月には夏の甲子園の中止が決まった。「最後の夏」に懸けてきた3年生の落胆はひときわ大きかった。 夏の県大会に代わる独自大会の開催が発表されたものの、甲子園出場につながるわけではなく、チームの雰囲気は沈んでいた。そんな中、村中秀人監督は選手たちを集め、「独自大会があるのだから感謝の気持ちをもってやろう。山梨のてっぺんを目指そう」と呼び掛けた。 三浦主将が「甲子園がなくなったことで『打倒学院』という目標が明確になり、全員で一つの目標に向かえた」と話すように、選手たちの目の色も変わっていった。山梨学院の打者の傾向から配球を練り、ピッチングマシンの1台を同校エースの得意球に設定し、打ち込んだ。集中力を保った選手たちについて、村中監督は「乱れることなく、最後までついてきてくれた。練習後のグラウンド整備を見ても気を抜いている様子がなかった」と振り返る。 迎えた夏の独自大会。順当に勝ち上がり、巡り合わせのように決勝で山梨学院とぶつかった。捕手として出場した三浦主将は3年生の目から勝利への強い執念を感じ取っていた。試合は4―4の七回、東海大甲府の4番・渡部海夢(かいむ)選手(3年)が値千金の場外ホームランを放ち、雌雄を決した。5年ぶりに夏を制した瞬間だった。 村中監督は「個々の技術は山梨学院の方が上。それでも勝てたのは精神面だと思う。実力差があるなら、それを埋めるには気持ちしかない」。その気持ちが粘り強さとして表れたという。実際、山梨学院の吉田洸二監督は試合後にこう語っている。「東海大甲府から『勝ちたい』という強い思いが伝わってきた」【金子昇太】 ◇ 3月19日に阪神甲子園球場で開幕する第93回選抜高校野球大会に東海大甲府が出場する。攻めの野球を目指すチームのスローガンは「アグレッシブ」。5年ぶりのセンバツ出場をつかんだチームの軌跡を振り返る。=つづく