フランスの教育は日本とまったく違う! 義務教育は3歳から&小学校で飛び級・留年は当たり前。家庭環境や公立・私立に関わらず教育格差をゼロに。その結果は?
「フランスの教育制度」と聞いて、何を思い浮かべるでしょう? 「教育は無料」ということや、夏休みが2カ月間もあることを、ぼんやり連想されるかもしれません。日本のメディアで諸外国の教育が取り上げられる際、モデルとなるのは北欧諸国であることが多く、フランスの教育制度が参考になるとはあまり思えない印象です。とはいえフランスは、変化し続けるイノベーションの国。欧州委員会が公表した「ヨーロッパにおけるイノベーションリーダー国家」の1つでもあります。チャレンジングな国民性は今年夏、パリオリンピックの演出でも存分に発揮されました。そんな人々を育むフランスの教育制度がどんなものなのか、在仏27年、パリで暮らすひとりの生活者としての、筆者の体験を交えつつ解説します。
小学生も飛び級・留年?
日本の義務教育には存在しない飛び級と留年。フランスではどちらも、小学校から存在しています。そのメリット・デメリットを考察する前に、「フランスの学校教育システムには共和国の理想が詰まっている」という肝心なところを、まず説明したいと思います。
フランス国民教育・青年省のHPを見ると、「教育制度の主原則」として「教育の自由、無料、中立、非宗教、義務」の5つの柱が掲げられています。さらに「1958年10月4日制定の憲法により、あらゆる段階における無料かつ非宗教の、公立の義務教育実施は、国家の義務である」とも。教育の機会を無料で提供することは、国の義務なのです(まさに義務教育!)。義務教育は3歳から16歳、日本の保育園から中学校までにあたります。
この「国家の義務」の教育を平たく解釈すると、裕福な家庭の子どもも、そうでない家庭の子どもも、移民・難民の子どもも、みんなが等しく国民教育・青年省の指導下にある学校に通い、都会であれ田舎であれ、条件は変わらないということ。経済的、地理的な不公平は、この大前提のもとにはあり得ません。2018年に公表された「貧困防止・撲滅の国家戦略」でも、教育の公平性は最優先事項の1つに挙げられています。 この国家戦略は、OECDの調査結果が明らかにした「フランスの貧困家庭の子どもが平均的所得を取得するまでには6代、約180年が必要」という現実を、一刻も早く解消すべく立ち上げられました。 平等な社会を実現するために重要な、平等な教育。そこではいろいろな環境下にある子どもたちが一つの学校に通い、ミックスされます。この「ミックスされる」ということも、教育には重要であると考えられています。
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